明治時代から昭和時代までさまざまな書画の模本を制作した田中親美(1875~1975)は、当時の収集家に書を普及する役割も行っていた。本研究課題では、その田中親美の作った模本のデータを集めるとともに、模本の調査、遺族からの聞き取り調査を実施した。とくに、5組制作した「平家納経(模本)」(原本:国宝、広島・嚴島神社所蔵)については、益田家伝来分(東京国立博物館所蔵)と大倉家伝来分(東京・大倉集古館所蔵)の比較調査を行ない、依頼者(収集家)によって田中親美が写し方を変化させていることを明らかにし、その成果を東京国立博物館の特集展示で公開した。
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