今年度は主に、大阪歴史博物館に寄贈された勝矢俊一氏旧蔵の刀装具および、大阪城天守閣に寄贈された勝矢俊一旧蔵の刀剣刀装具関連蔵書の調査を行った。 勝矢俊一氏は光村利藻より少し後に登場した京都の研究家・収集家であり、光村が収集品を手放した時期の直後から収集を開始していることから、光村家が手放した作品が勝矢コレクションに含まれる可能性があると見込まれていた。実際、大阪歴史博物館への寄贈品の中に『鏨廼花』所載の光村コレクションが1作品含まれることが判明した。 また大阪城天守閣に寄贈された蔵書は数千冊に及び、中には唯一本に近い冊子も含まれている。これらの蔵書のうち、大正~昭和初期の雑誌・古書類の一部を閲覧した。それらの雑誌の中には、現在の勝矢コレクションに含まれる鐔も掲載されており、また、関東大震災で被災する前の文書類の情報が掲載されているなど、刀装具研究において重要な資料群であると認められるものが多かった。膨大な量であるため期間中にそのすべての冊子に目を通すことはできなかったが、これについては引き続き調査を続けていきたい。 なお『鏨廼花』編纂文書の翻刻は昨年度に引き続き、学生アルバイトの補助を得て進めたが、メモ書きであるため筆圧の低い資料も多く解読には時間を要し、そのすべてを活字化することはかなわなかった。しかし、原文献の画像データはすべて揃えられており、読み下しこそできていないが、必要に応じ広く活用可能な状態にはある。
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