これまでほとんど計測されることのなかった古代の繍仏の染料を計測した。大きな成果は紫色の染料であり、7世紀後半から紫根が登場すること、それ以前は茜を用いていたことがわかった。制作年代について論争のある国宝・天寿国繍帳(奈良・中宮寺所蔵)からは紫根が検出されず、7世紀前半の作である可能性が高まった。また、図像や刺繍の技法より、国宝・刺繍釈迦如来説法図(奈良国立博物館所蔵、京都・勧修寺伝来)が7世紀後半の日本で制作された可能性が高いことも指摘した。いずれも日本を代表する繍仏作品であり、日本の仏教美術研究に大きな一石を投ずるものである。
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