研究課題/領域番号 |
17K02343
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
影山 悦子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, アソシエイトフェロー (20453144)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウズベキスタン / バクトリア / クシャーン朝 / ファヤズテパ遺跡 / 仏教美術 |
研究実績の概要 |
6月と2月にウズベキスタンのサマルカンドに出張し、考古学研究所において保存修復作業を行っているファヤズテパ仏教遺跡出土壁画の調査を行った。考古学研究所の保存修復室の専門家によって、3年前に開始された男性供養者の集団を表す12点の壁画断片のクリーニング作業、強化処置が終了し、最終段階である、壁画断片を展示用パネルに設置する作業が進められた。2月の出張には奈良文化財研究所・写真室の技術職員に同行してもらい、当該壁画の写真撮影を行った。 10月には研究協力者であるK. アブドゥルラエフ教授を日本に招聘し、国際研究セミナー「中央アジア西部の仏教遺跡と出土壁画について:ウズベキスタン南部ファヤズテパ遺跡出土壁画を中心に」を奈良文化財研究所で開催した。研究者だけでなく一般の方々の参加も得た。当該壁画の制作年代に関する最近の議論を専門家と共有するだけでなく、本研究課題の成果を広く報告する機会となった。 ファヤズテパ遺跡出土壁画は、発見当初からクシャーン朝期に制作されたと考えられていたが、最近になってクシャーン朝期以降とする説が有力になっている。筆者も、本研究を開始した当初は、クシャーン朝以降のグループに属す資料と考えていた。しかしながら、壁画の実物の観察を通して、また連携研究者や他の研究者との議論を通して、当該壁画はクシャーン朝期に作成された可能性が高いと考えるに至った。クシャーン朝支配下の中央アジアへの仏教美術の伝播を考える上でも重要な資料であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、11月にウズベキスタンに出張し、保存修復作業が完了したファヤズテパ遺跡出土壁画の最終調査および写真撮影を行う予定だったが、先方と当方の都合がつかず、出張が2月にずれ込んでしまった。そのため、報告書を年度内に完成させることができず、出版を次年度に延期することにした。
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今後の研究の推進方策 |
出版を延期した報告書の執筆・編集・出版を行う。報告書の内容は、ファヤズテパ遺跡出土壁画の保存修復事業の概要、壁画の保存修復の手法と材料、顔料の分析結果、修復した壁画の初歩的研究から成り、巻末に修復した壁画断片の写真と彩色模写を収録する。冊子だけでなく、PDF版を活用し、研究成果および壁画断片の公表につとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度中に出版する予定だった報告書の作成を次年度に延期したため
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