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2018 年度 実施状況報告書

演劇におけるジャポニズム―海外巡業劇団の伝えた「日本」-

研究課題

研究課題/領域番号 17K02349
研究機関東京大学

研究代表者

根岸 理子  東京大学, 教養学部, 特任研究員 (80322436)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードジャポニズム / オリエンタリズム / 日本人論 / 海外巡業劇団 / エキゾチシズム
研究実績の概要

19世紀末、欧米の演劇界に日本ブームともいえる現象が生じたが、多くは日本風の設定を日本人でない者が演じる形であった。こうしたブームの中、日本の巡業劇団が欧米において〈ホンモノのニッポン人〉として公演をおこなったのだが、その果たした役割や影響には、計り知れないものがある。
そういった巡業劇団のうち、20世紀初頭、20年近くにわたって欧米諸国を巡業し、日本演劇を紹介した日本女優・マダム花子(1868-1945)の一座の実態を明らかにすることを、本研究は特に目指している。2018年度は、一座が拠点としていた英国において資料収集・調査をおこなった。また、日本では主として外務省外交資料館において資料収集・調査をおこなった。そして、もと芸者で女役者の一座での子役の経験もあった花子が、自らの技芸を生かしながら、外国の人々が持つ〈ニッポン〉のイメージを投影する舞台作りをおこなっていたことが明らかになった。
興味深いのは、そのような「Self-Orientalization(自己東洋化)」ともいえる姿勢で成功をおさめておきながら、実際の花子は、自身の考えを臆せず表明し、差別的な扱いにもスマートに対応できる、極めてモダンな人物であった点である。これは、彼女が英国において「英国をどう思うか」とインタビューされた時の回答と、アメリカ人から「日本の戯曲なので、上演してはどうか」と、洗濯屋の帳簿を送りつけられた時の対応などから分かったことである。
マダム花子は、主として彫刻家オーギュスト・ロダン(1840-1917)の唯一の日本人モデルとして知られている人であるが、20世紀初頭、日本の演劇を紹介するにふさわしい人物であり、国際的に活躍する日本人アーティストの草分け的存在であったといえる。最終年度は、そのことを更に裏付けられるような資料を収集し、本研究の集大成をする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、海外の諸機関に埋もれているマダム花子に関する資料を収集し、一座の活動の模様を明らかにすることを目指すものである。マダム花子一座と縁が深く、比較的資料を得やすい英国での調査をおこない、大英図書館において新資料を得ることができたのは、大きな収穫であった。日本においては外務省外交資料館で調査をおこない、1902年の花子の渡欧の状況と、1917年の再渡欧の状況が明らかになったのも喜ばしいことである。
新資料は公開には至らなかったが、「今後の研究の推進方策」で示しているように、現在発表をする準備をしているところである。

今後の研究の推進方策

本年度は当研究の最終年度であるので、これまでの成果をまとめつつ(書籍として出版することを予定している)、未調査の部分が残っているアメリカでの資料収集・調査をおこなう。特に、マダム花子の肖像画を所蔵している可能性のある美術館での調査を進めたい。また、マダム花子一座が本拠地としていた英国においての調査を完了することを、目指したい。

次年度使用額が生じた理由

〈理由〉資料として洋書を必要とすることの多い当研究であるが、入手に時間がかかってしまったため。本年度はそうした時間も考慮に入れ、注文をする予定である。
〈使用計画〉海外巡業劇団の調査という研究の内容上、本研究では、旅費が多くの割合を占めるので、引き続き、海外および日本においての調査に使用したい。また、海外の人々が日本演劇や日本俳優をどのように見てきたかを探る必要があるので、海外の文献(洋書等)を購入する予定である。

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公開日: 2019-12-27  

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