20世紀初頭、海外でデビューし、20年におよぶ活躍ののち、日本に帰国し以後舞台に立つことのなかった日本女優・マダム花子については、関係資料が海外に分散しているため、これまでまとまった研究はなされてこなかった。特に日本における資料・調査と西欧における資料・調査をつなぐ総括的な研究が必要とされていた。 本研究ではそれを実行し、成果を一般の方々にも分かるよう書籍にまとめることができた。ロダンのモデル、あるいは森鴎外の小説「花子」のヒロイン(のモデル)でもある花子が、自らの技芸を生かしながら、海外の観客が見たがっている〈日本〉を意識的に見せ、成功をつかんでいった軌跡を示せたものと思う。
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