令和元年度には、昨年度に設定した各研究テーマに対する調査をさらに進めることができた。また昨年度に引き続き、ウェブサイトや展覧会など、さまざまなかたちでその成果を公開できた。 同時代のドキュメンタリー録音に関する研究については、その歴史的背景の調査に力を入れた。その成果にもとづいて、日本ポピュラー音楽学会において口頭発表「「エアチェック」の普及と1970年代日本の消費文化」、国際日本文化研究センターでの研究会「音と聴覚の文化史」において口頭発表「市民による音づくり──荻昌弘のオーディオ批評」を行った。現在、これらにもとづく学術論文を準備している。
「オーディオユニオン録音コンテスト」の研究については、コンテスト入賞者数名にインタビューすることができた。その成果は『現代思想』における論考「音の採集──「オーディオユニオン録音コンテスト」から見る一九七〇年代日本の音響技術文化」と、現在編集中の英語アンソロジーへの寄稿論文というかたちで発表した。
平成30年度から継続してきた、1970年代日本の諸芸術における録音の意義をめぐるプロジェクト「日本美術サウンドアーカイヴ」は、今年度も2回の展覧会を開催し、1枚のCDを制作することができた。またこれまでの調査にもとづいて、デンマークで開催された国際会議「Media Arts History 2019 RE:SOUND」と、表象文化論学会において口頭発表を行なうとともに、学術論文「堀浩哉の1970年代のパフォーマンス――日本における1960年代末の学生運動以後の美術」を執筆し、『カリスタ』に投稿した。
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