これまで、Mahlerが作曲した『交響曲第10番』は、冒頭などにあらわれる和声付けがされていないヴィオラの旋律や203小節から208小節にあらわれる9つの異なる音による和声などから、しばしば調性が不明確である作品と指摘されてきたが、本研究により、冒頭などにあらわれるヴィオラの旋律に機能和声による和声付けを行ったこと、9つの異なる音による和音について、和声分析によりその傾向を抽出したこと等から、機能和声を敷衍して解釈することによって調性の中の機能を持つ和声としての説明が可能であることを示すことができた。なお、冒頭のヴィオラの旋律に和声付けを行ったのは、確認しうる限りでは国内外で初である。
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