本プロジェクトの目的は、アジア太平洋地域の戦争画研究とそれに関する作品を調査することによって、軍事主義やポストコロニアルの視点から日本の「戦争画」研究そのものを捉え直すことにある。当該年度は、これまでの研究をさらに発展させることに集中し、(1)在日コリアンや戦争を経験した日本の女性美術家たちの作品・資料調査を行なった。 (2)占領下、GHQ参謀第二部の編纂した戦史『マッカーサー元帥レポート(Reports of General MacArthur)』に掲載された「戦争画」(特に「御前会議」の絵画)について調査を進め、「この国の芸術:「日本美術史」を脱帝国主義化する」(オンライン連続講義)で発表した(2022年12月、2023年度に出版予定)。G2のチャールズ・ウィロビーのもとで『マッカーサー元帥レポート』の編纂を担当した荒木光子の関与を明らかにすることによって、従来の戦争画史の再考をうながした。 (3)今年度、新しく着手したのは、敗戦直後(1946年夏)、日本美術会が作成したという「美術界に於て戦争責任を負ふべき者のリスト」について、作成の経緯の検証と、その後の言説や、リストがどのように研究資料のなかで引用されてきたのかについて調査・分析した。(「日本美術会「戦犯リスト」をめぐる、いくつかの疑問」『美術運動』no.150、2023年3月) (4))国内で開催された戦争に関わる主な関連展覧会調査を行なった。
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