最終年度のテーマを、「時代に即した演奏様式と現代的な生命感の融合」と設定し締めくくりの活動を行った。題材は本来の最終年度(令和元年度:新型コロナウイルス感染症拡大のため成果発表を中止)に取り上げたカンタータ182番とミサ曲ヘ長調とし、実践的な研究を進めた。具体的には上記題材の、①旋律とリズムの関係、②外声(ソプラノとバス)と内声(アルトとテノール)及び器楽パートの役割、③拍節内における音符の長さについて、④ピリオド楽器を用いた古楽スタイルにおけるアーティキュレーションとレガートによる歌唱、について演奏効果の検証を進めた。これらを踏まえ、「歯切れのある拍節感の表現」、「旋律を美しく保った上でのアーティキュレーションの考え方」、「和声感から導かれる各パートの響きの違いと役割について」、「言葉の持つ色彩感の表出」に焦点を当て年間60回の練習プログラムを計画し、一般参加者と合唱実践を行った。 研究計画の当初案では最終年度に、日常的に礼拝でバッハのカンタータが演奏されるドイツのプロテスタント教会において当地の器楽奏者との共演により成果発表を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大により海外移動が困難となったため、東京の浜離宮朝日ホールにおいて最終成果発表を行うこととなった。共演の器楽奏者及び独唱者には今年度の活動方針を示した上で音楽的協議を重ね、単なる古楽演奏スタイルの学びではなく、現代における新たなバッハ声楽曲の可能性を演奏会において提示した。 最終発表における演奏について、国内外で活動する共演者、幅広い層の聴衆より意見聴取を行い、テーマに対する成果と今後の演奏スタイルについて検証した。
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