研究課題
基盤研究(C)
1950年代末に登場した「スタイル画」風表現は,少女マンガ論では70年代中頃の「重層的コマ配置」の起源と見なされてきた.後者は少女マンガが独自の視覚的表現を確立していく契機として重視されてきたが,1960年代における両者の関係性については検証されないままであった.本研究では,「スタイル画」出現時の状況を明らかにし,1960年代におけるその継承と断絶を作品から検証し, 1970年代の「重層的コマ配置」へは単純に結びつけることの出来ないという両者の複雑な関係を明らかにした.
美術史
「スタイル画」は1960年代には余分な装飾と見なされていたが,近年の少女マンガ論では1970年代の「重層的コマ配置」の起源として重視されるようになった.本研究では,「スタイル画」という用語の出現時の概念を明らかにし,1960年代におけるその概念の継続と断絶の系譜を検証した.結果として,すくなくとも従来言われている高橋真琴の「スタイル画」を単純に受け継いだのではないことが明らかとなり,「重層的コマ配置」に関する通説の見直しとして,重要な指摘となったと考える.