近年研究領域において音声資料に対する関心が高まり、芸能研究のみならず近代の日本文化を論じる切り口や裏付けとしても、多くの歴史的録音を含むSPレコードが取り上げられる機会が増えている。しかしレコードに関する文献は限られており、過去に国内で発売された数万種類といわれているSPレコードに関する書誌的データも、整備されているとは言い難い状況である。報告者はこの現状を鑑みて、「課題番号24520168 基盤研究(C)(一般):東洋蓄音器(オリエントレコード)の社史調査とディスコグラフィの作成(H24~H27)」において、大正2-8年のオリエントレコードの網羅的なディスコグラフィ(音盤目録)を作成した。当該研究はその延長上にあり、ニットーレコード、ナショナルレコード、日蓄オリエントレコードという、大正・昭和初期の関西系大手三社に関する網羅的なディスコグラフィを作成し、新たな基礎データを研究領域に供することを目的とした。今回その研究成果として次のディスコグラフィを作成した。 *ナショナルレコード 計210枚 *日蓄オリエントレコード 計3873枚 *ニットーレコード 計6548枚(ニットーレコード6392枚+ニットー長時間レコード77枚+クリスタルレコード79枚) ナショナルと日蓄オリエントに関しては両レーベルの活動期間に発売された内の9割以上のデータを収録できたと考える。ただニットーに関しては、製造元の日東蓄音器株式会社が太平蓄音器株式会社に吸収合併されるかたちで昭和10年11月より大日本蓄音器株式会社となり再スタートしたため、今回は大正10年4月の第1回発売から昭和10年12月新譜までを取り上げた。ニットーレーベルはこの合併以降も存続するが、それらについては「21K00214、2021年度 基盤研究(C)『内外・タイヘイレコードのディスコグラフィ作成』」に反映させたい。
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