当初研究対象を、8つの芸術祭に焦点をあてていたが、中止される芸術祭や地域づくりへの影響を見出し難かったものもあった。一方で、2017年から始まった奥能登国際芸術祭、リボーンアート・フェスティバルでは、地域づくりにつながる戦略がみられた。そこで、当初から研究対象としていた①あいちトリエンナーレ(長者町)、②大地の芸術祭(莇平集落)、③水と土の芸術祭(小須戸)、④いちはらアート×ミックス(内田・月崎・養老渓谷)、⑤札幌国際芸術祭(札幌市資料館)に加え、⑥奥能登国際芸術祭(飯田・正院・若山)、⑦リボーンアート・フェスティバル(はまさいさい・石巻のキワマリ荘)を研究対象とし、地域づくりへの影響を分析・考察することとした。 すでに、平成30年度(2018年度)までに、上記7つの芸術祭についてほぼ現地調査を終えていた。また、平成29年度(2017年度)に①あいちトリエンナーレ、⑤札幌国際芸術祭、平成30年度(2018年度)に④いちはらアート×ミックスについて、それぞれ雑誌論文に研究成果をまとめた。 そこで、令和元年度(2019年度)は、当該年に開催された①あいちトリエンナーレ、⑦リボーンアート・フェスティバルを、追加で現地調査を行う。また、前年度に理論的分析を課題とした⑥奥能登国際芸術祭は、内発的発展論により、地域づくりにつながらない要因を多角的に考察した。②大地の芸術祭についても、これまでの調査・分析結果をまとめ、ソーシャルキャピタル形成に寄与することを明らかにした。 以上から、これまでの7つの芸術祭の現地調査、分析を総括し、芸術祭が地域づくりにつながる主な3条件が、1) 地域資源の活用、2) 地域コミュニティの主体性、3) 持続可能な戦略を持つことである、との仮説をたてた。仮説の検証が今後の課題である。
|