研究課題/領域番号 |
17K02373
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研究機関 | 駿河台大学 |
研究代表者 |
大久保 博樹 駿河台大学, メディア情報学部, 教授 (30458541)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 効果音 / 環境音 / 4K映像 |
研究実績の概要 |
本研究は、映像作品に付けられた効果音が、視聴者へどのような影響を及ぼしているかについて、視聴者反応をもとに評価する。具体的には、映像作品で特定の心理励起といった演出の狙いが、効果音によってどのように強調され、また効果音の持続時間とどのような関係性があるのかを調査することで考察していく。効果音の経時変化を視聴者の印象の経時変化と重ね合わせ、効果音そのものの影響とその持続時間による影響の変化に着目し、効果音の最適化に求められる主たる要因の解明に接近することも試みる。これを受けた研究計画で、本年度は次の2点が軸となった。 1.使用する音源 : 南二郎(音響効果技師)の効果音ライブラリィからの選定 2.使用する映像 : 4K映像のオリジナルのシーケンスと制作環境の整備 1.は、南二郎が遺した擬音・効果音のアナログ音源から選択する。これまでの研究活動におけるマイグレーションによって、これらはすべてデジタル化している。音源は光学ディスクにライブラリィとして格納し、270枚ほどのメディアとして本務校の専用収蔵庫で保存してきた。しかし、バックアップ用のハードドライブも含め、経年変化によるアクセス面の可用性に課題が生ずる可能性が出てきた。そこで連携研究者による検証をもとに、今後のアクセスを確実にするために高耐久のM-DISCへの複製によるバックアップを行い、研究遂行のための保全を図った。また、大量の音源から効率的に検索するシステムについても現場からの考察を行った。 2.の4K映像(イメージ)の撮影計画は、シーケンス要件と構造によって決定する。今年度はその概要やアイデアと課題の洗い出しの検討にとどまった。なお、評価用コンテンツの制作環境は、4K映像ならびに効果音を高品位かつ効率的に編集・共有可能なハードウェアの選定と導入を完了し、次年度の研究推進における映像制作に関する基本的な準備は完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度においては、評価に用いる4K動画の映像作品に関するシーケンスの構想を詳細かつ具体的にまとめ、これに基づく研究活動を計画していた。高詳細な4K映像(イメージ)に適した音源を確認していく中で、その音源が環境音として規定されること、映像の品位と音質との関係における影響の可能性の程度並びに実証的な評価での視聴者反応の的確な収集について多角的な検討を要した。そのため、映像シーケンスに関する企画、採用する映像、その撮影計画といった具体的で実行可能な計画の立案にまで踏み込むことが叶わなかった。しかし、これらを整えない限り、映像の撮影には入れず、よって音源の選択も絞りきることができないため、慎重にならざるを得なかった。 また、これらの音源は音響効果技師が作った効果音を中心に選択するのであるが、保存している光学ディスクの経年変化等に対処するためのバックアップ作業が必要と判断し、実行した。このような作業には最新の注意が求められるため、予想を上回る工数と時間を要した。以上の状況と経過から当初の計画と進捗からすると、やや遅れを生じる結果となった。なお、使用する音源については、こうしたバックアップの複製や新たなラベリング作業等が完了したため、アクセスにおける不都合や保全への懸念は取り払われている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に準じた企画の具体的な検討と制作工程の検討を並行して進め、映像作家等からの助言も仰ぐなどして、映像(イメージ)とシーケンスの固定をはかり、撮影と編集に取り組む。これにより使用する効果音のカテゴリーや内容が確定する。その後、効果音の選定基準と構成方法の検討を綿密に行ない、視聴者反応を調べるために適切な映像と具体的個別的な効果音の組み合わせを決定する。 以上により、視聴者による印象評価に適する演出方針の確定と実際の映像編集を行い、その検証から追加撮影と仕上げの編集によって1つのシーケンスで意味を有する作品(評価用の映像コンテンツ)として完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
練り上げた企画に基づく実際の映像・音声収録に関する工程の関係から進捗がずれ込んだため、予算の執行と時期を慎重に検討したことによる。研究課題と環境整備、設備備品などを研究費で購入するには、最適なものとすべく慎重な取り組みが、本研究の確かな推進には必要なこともあり、必須の環境を中心として予算を執行した。 使用計画は、映像作品の制作環境と周辺機材等に関する選択と購入を改めて検討する。当初の計画をより効率的に推し進められる制作環境の構築と、映像作品の完成に向けたスケジューリングの見直しを行うことで、当初の計画に基づいた進度で研究を進めていく。
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