研究課題/領域番号 |
17K02374
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研究機関 | 尚美学園大学 |
研究代表者 |
八木 良太 尚美学園大学, 芸術情報学部, 准教授 (70626473)
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研究分担者 |
亀井 克之 関西大学, 社会安全学部, 教授 (10268328)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コンサートイベント / コンサートビジネス / リスクマネジメント / リスクコントロール / 経営戦略と経営組織 / アートマネジメント |
研究実績の概要 |
本研究は、リスクマネジメント理論に依拠しつつ、コンサート関係者に対する聞き取り調査やフィールド調査、文献調査等の手法を用いて、コンサートイベントのリスクマネジメントの実態を理論的・実証的に解明することを目的としている。具体的にはリスクマネジメント理論のリスク対応法であるリスクコントールを取り上げ、(1)コンサートイベントのリスクコントロールの具体的手段、(2)最適なリスクコントロールの実践に必要な要素、(3)リスクコントロールの有効性と限界、について検討する。29年度は、リスクコントロールの具体的手段である3つのハードコントロール(①契約、②法制度、③マニュアル)に関する文献調査、聞き取り調査およびフィールド調査を実施し、これらハードコントロールを用いたコンサートイベントのリスク対応についての議論・考察を行った。本年度の研究実績は以下の4点に概観することができる。 1.先行研究のレビューを含む文献調査により、契約(出演契約、共同出資製作契約、協賛契約)、法制度(消防法、警備業法、食品衛生法、火薬類取締法、騒音規制法)、マニュアル(安全・警備マニュアル)の中身について精査した。 2.契約、法制度、マニュアルの作成・策定・運用の実態を把握するため、コンサート関連企業のリスクマネジャーおよびコンサートプロデューサー10名に対して聞き取り調査を実施した。 3.具体的な事例を把握するため、国内外の音楽イベント(加賀温泉郷フェス、京都和楽器サミット、すみだストリートジャズフェスティバル、セイジオザワ松本フェスティバル、台湾MegaPort Festival)のフィールド調査を行った。 4.研究成果を日本リスクマネジメント学会、日本情報経営学会、韓国リスクマネジメント学会で報告するとともに、契約を通じたコンサートイベントのリスクコントロールに関する論文が日本リスクマネジメント学会誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請した研究計画書に基づいた研究課題を計画通りに実施することができた。また、当初の予定を越える数のインタビュー調査およびフィールド調査を実施することができ、今後の研究の土台となる情報や示唆を数多く得られた。 本年度の課題として取り組んだ、リスクコントロールの具体的手段である①契約、②法制度、③マニュアルに関する研究のうち、先述の通り、契約に関しては査読付き論文および学会報告という形で成果をまとめることができたが、法制度とマニュアルに関しては成果をまとめられていないので、これらの成果の公表を次年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は、コンサートイベントのソフトコントロールの実態を調査する。まず、リスクマネジメント研究の理論的サーベイにより、ソフトコントロールの概念とともに、その具体的手段であるリーダーシップ、コミュニケーション、組織文化について考察する。リーダーシップでは、経営者やコンサートプロデューサー、リスクマネジャーのリスク対応に関する知識や経験、意思決定について、コミュニケーションでは、組織におけるリスク情報の共有(リスクコミュニケーション)について、組織文化では、高いリスク感性をもった組織文化形成について扱う。そして、これらソフトコントロールに関する詳細な質問項目を設定して、コンサート業界関係者に対して聞き取り調査を実施し、その調査結果をもとにソフトコントロールの順機能と逆機能について考察する。聞き取り調査はコンサート関連企業のリスクマネジャーに加えて、経営者やコンサートプロデューサーに対しても行う。なぜなら、組織マネジメントに関するソフトコントロールでは、リスクマネジャー以上に経営者やコンサートプロデューサーが重要な役割を果たすからである。 また、本年度も国内外の音楽イベントについてのフィールド調査を実施する。29年度に視察した台湾最大の音楽イベント「MegaPort Festival」は、高雄市の埋立港湾で開催され、メイン会場がある埠頭地域までの通路として海上に大規模な仮設桟橋(大港橋)が掛けられており、数万人がその大港橋を渡ることになる。大港橋は当該イベントのシンボル・目玉的演出であると同時にリスク要素でもある。リスクマネジメントの研究対象として非常に興味深い当該イベントを昨年に引き続き本年度も視察するとともに、イベント関係者に対して聞き取り調査を行い、事例研究としてまとめたい。さらに他の事例研究についての情報収集も継続して行い、論文や学会報告として公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度の研究計画はほぼ予定通り進捗したが、フィールド調査の調査対象イベントの変更や予想外にフィールド調査が進んだことにより、余剰金(次年度使用額)が発生した。 30年度は、コンサート業界関係者に対するインタビュー調査と国内外の音楽イベントのフィールド調査が予定されているが、これらの調査を精細に行うことにより、次年度使用額を加えた30年度の研究費を効果的に使用したい。
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