1950年代、米国側の資金援助を得て渡米した日本人美術家がどのような基準(あるいはどのような人的ネットワーク)で選ばれ、いかなる活動を行ったのか、また彼らが帰国後日本の美術界にいかなる影響を齎したのかを検証するため、令和元年度は以下のような資料収集、調査研究を行った。 最終年度は海外調査を行わず、複数の美術館で国内調査を行った。北海道伊達市噴火湾文化研究所寄託となっているフランク・シャーマン資料を調査し、シャーマンと猪熊弦一郎、岡田謙三、脇田和、関野凖一郎、内間安セイら渡米作家との間に幅広い交友があったことを確認した。また、神奈川県立近代美術館では1962年にロックフェラー財団の招聘で渡米した高橋力雄資料を調査し、人的ネットワークと渡米中の行動を把握した。さらに、沖縄県立博物館・美術館では1959年に帰米した日系アメリカ人内間安セイの所蔵作品を熟覧することができた。予定としては和歌山県立美術館にて、ジャパン・ソサエティの招聘で渡米した泉茂と森泰の資料調査を行うはずであったが、大型台風のため調査が中止となったので、これは今後の課題として残っている。 以上の調査を踏まえて、令和元年10月5日に「1950年代の日米美術交流に関する研究会」(於聖徳大学)を開催、国内外から美術史研究者を招き、話題提供を求めるとともに、集中した討議を行って研究の深化を目指した。発表者は味岡千晶氏(日本美術コンサルタント、在オーストラリア)、江口みなみ氏(横浜美術館学芸員)、向井晃子氏(神戸大学国際文化学研究推進センター協力研究員)、研究代表者の4名である。なお、論文としては、2021年4月にフロリダ州のリングリング美術館で行われる斎藤清展のカタログに「The Art of Saito Kiyoshi: Internationalism and Regionalism」を寄稿した。
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