研究課題/領域番号 |
17K02377
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研究機関 | 桐朋学園大学 |
研究代表者 |
金子 仁美 桐朋学園大学, 音楽学部, 教授 (00408949)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミクスト作品 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、まず研究計画に沿って、21世紀に入ってから発表された作品についての情報収集を行なった。たとえば、制作場所、使用アプリケーション、制作方法、チームの有無などを調べることで、作曲家が情報処理技術をどのように用いることが出来たのか、どのような方法により表現の拡張が可能となっているか、IRCAM(フランス国立音楽音響研究所)のデータベースや資料に基づき調査を行なった。 パリ第8大学では、博士課程の学生や教員との議論の中で、情報処理技術を使った音楽表現が、社会や地域、子供達への教育にも生かされる可能性が検討された。この議論は、日本での大学教育に役立てることが出来るかもしれない。 また、実践研究として、同大学施設において、空間を使った作品制作を進めた。譜面をコンピュータに起し、プログラムに乗せ、複数スピーカーにより、音の交差、遠近感の構築、空間対位法などの実験を行なった。 他方、日本での活動として、学生との新しい表現の可能性を個々人それぞれに合わせて準備し、議論を行う勉強会、パリ大学研究者を招聘してのワークショップ、研究紹介などの国際交流を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究協力者の体調不良により、予定する企画を来年度に延期した。また、本年予定していた実践研究もあまり進展させることが出来なかった。計画が進まない時の研究遂行の方法として、メールやスカイプ会議なども案として出したが、それも叶わない時期があった。その間、フランスにおける大学院の教育環境、教員環境などを学ぶ機会を得た。今後の研究遂行のためにも有益な情報を得ることができた。そのうち、パリ第8大学で博士号を取得したPhilippe Galleron氏の研究は、環境、教育における展開を示唆するもので、次年度以降の本研究、ならびに教育への展開の手がかりを得た。当初の研究計画と少し異なる方法を取らざるを得なかったが、計画通りでは得られない発展が望めるかもしれない。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、国際交流の研究発表の場として、パリ第8大学かパリ・イタリア文化会館において、日本、フランス、イタリア3国の研究者、作曲家、演奏家による企画を実施するため、準備中である。また、イタリアのピアニストで研究者である Franco Venturini 氏を含めた共同制作により、イタリアを含めた国際企画に発展した形での企画として、今年度は、パリで講演と作品発表を行う予定である。この企画が実行できたあとには、日本、可能であればイタリアでも同様の企画を実施したい。この企画を通して、情報処理技術が、作品制作に具体的にどう生かされているかについて、音加工、編集方法を分析、実験することで、拡張された表現モデルを明らかにしてゆきたい。 その後の展望として、 1)技術者(Carlo Lorenzi 氏また それに準ずる高い技術と経験をもつ人)を招聘し、ワークショップ開催を計画する。大学機関などを対象に開催することで、次世代への教育 の一環として、電子工学技術が芸術表現拡張にいかに入り込み、関与しているか、そのモデルの一部を、本研究の途中経過という形で提示する。 2)日本で創作環境を整えるために、本務校桐朋学園大学を中心に、教職員など関係者と議論を進め、体制作りを行う。 3)音楽情報処理研究会に参加し、日本の音楽情報処理技術を音楽創作現場で利用できないか検討を行い、申請者自ら作品制作することで、研究テーマである表現拡張モデルを制作側から実験する。 残り2年間の研究期間中、可能な範囲で、ICAM以外の研究機関、ドイツKM、オランダソノロジー研究所などで創作状況も調査し、ヨーロッパを中心とした芸術音楽の先端状況を的確に把握し、日本での展開に活用できる要素を取り入れる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に実行予定だった企画が、研究協力者の体調不良で実施できなかったため。
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