• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

指揮者C・クラウスとナチス・ドイツ時代のラジオ番組制作に関する実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K02378
研究機関日本大学

研究代表者

佐藤 英  日本大学, 法学部, 助教 (10409592)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードナチス / クレメンス・クラウス / マスメディア / ラジオ / 音楽政策 / プロパガンダ / ドイツ / オーストリア
研究実績の概要

2017年度は、主に以下の2点について研究を行った。
第一に、クレメンス・クラウスが1930年代後半までにドイツ帝国放送協会とどのような関係を築いていたかを考察するために、ベルリンとシュトゥットガルトの事例を中心に、資料の収集と分析を行った。夏期休暇中にドイツ(ベルリン、ミュンヘン)ならびにオーストリア(ウィーン)のアーカイブや図書館を訪問し、未公開のドキュメントや日本の図書館に所蔵されていない文献から、研究に活用できる部分を特定し、複写することができた。現在、この資料の整理を進めているところである。
第二に、クラウスがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と行っていたラジオ放送番組の制作について研究を行った。本年度の前半には、1942年9月から1944年8月までの彼らの活動について、当研究の開始前に収集していた資料(このメインはウィーン・フィルの歴史アーカイブにおいて入手した、当団のラジオ放送に関する未刊行のドキュメント)の整理が完了し、成果を公表する見通しが立った。万全を期すため、先述のドイツとオーストリアにおける研究調査で、不足していた資料の補充にも努めた。この成果は、2本の論文として刊行された。論文では、クラウスをはじめ、他の演奏家の動向も積極的に視野に入れた。これにより、このオーケストラが当該の期間中にラジオ放送においていかなる活動を行っていたかについて、詳細に検討することができた。論を進める過程では、放送日についても、新聞の番組表を手掛かりに、可能な限り情報を示した。放送用に収録された素材がどのように活用されていたかについては、先行研究において十分に調査されているとは言えない状況だったからである。放送日を考察に入れたことにより、論文においては、ナチス・ドイツ時代のこのオーケストラの評価にとどまらず、番組制作のコンセプトの変化についても指摘することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

夏期休暇を利用してドイツ(ベルリンとミュンヘン)とオーストリア(ウィーン)で3週間、調査を行った。クラウスがベルリンとミュンヘンで行ったラジオ放送における活動に関して、多くの資料を渉猟し、研究を進めて行くうえで重要な資料を多数、発見することができた。目下、この資料の整理と分析を行っており、近いうちに論文として成果を刊行できるよう、準備しているところである。
今年度の研究成果として、1942年9月から1944年8月までのウィーン・フィルハーモニー管弦楽団がラジオ放送において行っていた活動に関する2本の論文を挙げることができる。これらの論文では、クレメンス・クラウスだけでなく、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、ハンス・クナッパーツブッシュ、カール・ベームなど、同時代の指揮者の動向も視野に入れることにより、このオーケストラのラジオ放送における活動を俯瞰できるものとなった。当初、これらの論文については、研究の3年目と4年目において執筆を予定していたが、計画を前倒しして成果の公表を行った。2016年度までに集めていた資料のうち、1942年9月から1944年8月までのウィーン・フィルの放送の仕事に関するものについては整理が終わったこと、当研究の開始後に入手した資料を加えることにより、この期間については執筆が可能となったこと、クラウスとウィーン・フィルの活動を検証するためには、他の指揮者の動向も念頭に置く必要があり、成果を出していくためには相当量の紙数が必要になることが見込まれてきたこと、成果を公表できる発表媒体を勘案した場合、当年度から継続的に論文を書いていく必要があると判断したことが、その理由である。

今後の研究の推進方策

2018年度は、前年度にドイツとオーストリアにおいて収集した資料について整理を進め、成果を公表することを目指したい。まずは、クラウスが帝国放送シュトゥットガルト局の番組制作者と交わしていた未刊行の文書を基に、同局の番組に彼がどのような貢献をしていたかについて、検討を行う。昨年の夏期調査で入手した1940年頃にドイツ帝国放送協会で管理していた録音盤の総目録も活用すれば、クラウスの位置付けをより具体的に示すことができるのではないかと考えている。また、クラウスとベルリン・フィルの活動に関して、新資料が出てきたため、何らかの形で成果を公表したい。
クラウスとウィーン・フィルの活動についても、引き続き、論文を刊行していく予定である。1944年9月から終戦までの間については資料が不足しているため、ウィーン・フィルの歴史アーカイブやオーストリア国立図書館での調査が必要である。また、1938年のオーストリア併合から1942年の前半期までの同オーケストラの番組については、調査の精度を上げるため、アプローチの方法を再考することが求められてきている。特に、1941年の放送データに関しては、ドイツ国内のラジオ情報誌や日刊紙から得られる情報が極めて少なく、当時の放送の実情を把握することに困難が生じている。ドイツ以外の国の新聞などからデータを得る方法がないか、現在、方策を模索しているところである。
ミュンヘンに保存されているクラウスの未刊行のドキュメントについても、まだ調査していないものが多数ある。現地に赴かなくては調査ができないため、ミュンヘンでの調査も、継続的に行う予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] 総力戦下のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団――1943/44年のシーズンにおけるクレメンス・クラウスとカール・ベームの指揮によるラジオ放送番組に関する研究――2018

    • 著者名/発表者名
      佐藤 英
    • 雑誌名

      桜文論叢

      巻: 96 ページ: 483~519

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 1942/43年のシーズンにおけるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のラジオ放送番組2017

    • 著者名/発表者名
      佐藤 英
    • 雑誌名

      桜文論叢

      巻: 95 ページ: 1~33

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi