本研究課題の最終年度である2019年度は、1.前年度に実施予定であった欧州のダンスアーカイブの訪問調査、2.バレエ音楽のアーカイブ化において生じる問題点の整理、3.前年度より継続している「バレエ史研究会」の開催とホームページ・SNSを通じた情報発信、という三つの柱を軸に研究調査活動を進めた。 1.については、2020年2月に英国ロイヤル・オペラ・ハウス(ロンドン・コヴェントガーデン)併設の音楽図書館への訪問調査を実施した。その際、同図書館の図書館長トニー・リカード氏より上演のためのバレエ音楽の準備過程について説明を受け、その上で、バレエ音楽の所蔵方法、楽譜の保管に関する問題点、ロイヤル・オペラ・ハウス音楽図書館における今後のアーカイブ化の取り組み等について同氏にインタビューを行った。 2.については、「バレエ史研究会」の有志メンバーとともに、《白鳥の湖》、《海賊》の二作品を例に、主要ヴァージョンと現存楽譜に関するデータベースの試作を行った。現時点でのこの作業は、データベース構築を目指すものではなく、データベース試作に際して生じる問題点のあぶり出しを目的としたものであり、結果的に今後検討すべき複数の問題点が抽出されることとなった。 またこれと並行して、現在国内で購入可能な主要バレエ作品の楽譜を対象に、ヴァージョン間の異同についての調査を進めた。この作業は今後もさらに継続するものであるが、調査結果の一部は2020年度内に大学紀要で発表予定である。 3.については、2019年4月にバレエ指揮者・バレエ音楽編曲家の稲垣宏樹氏、2019年7月にロシアバレエ研究家の斎藤慶子氏を招いてバレエ史研究会を開催した。当日の発表および議論の内容は、バレエ史研究会ホームページと研究代表者名義のSNSにて情報公開している。
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