金属の丸い粒(金、金合金)を連続して基板上に接合する技法は、粒金と呼ばれる。文献調査では、古代粒金技法は銅酸化物で接合されているというのが定説となっている。それを基に粒金技法のメカニズムを解明し、普遍化するため、金工作家とマイクロ接合の専門家が連携して研究を進めた。 金や金合金を用いて、粒と基盤の接合を銅酸化物のろう材(トラガカントゴム1:炭酸銅粉末4:ボラックス水10:蒸留水30の重量比率で混合したもの)で加熱雰囲気や温度雰囲気を変えて実験を行った。 金(K24)の粒と基盤をろう材を用いて接合し、接合部をX線透過像で観察評価し接合部に美しいフィレットを確認し、良好な接合が明らかになった。EPMA観察のマッピング画像でもCuの拡散が確認できた。 接合温度は、金(K24)では950℃、金合金K20(83.5Au-16.5Ag)では900℃、K16(66.7Au-33.3Ag)では830℃で良好な接合が得られた。ボールシェアテストの結果、都市ガスバーナー接合よりも電気炉接合のせん断強度が高く、さらに K20(83.5Au-16.5Ag)は270.8N、K16(66.7Au-33.3Ag)はそれ以上となりAg含有量の増加に伴い接合強度は向上する結果となった。 粒金接合部と基板の色彩の同一化では、実際に金粒と基板を接合し、接合部と基板の色彩の差異を分光測色計と目視観察で評価した。その結果、分光測色計での計測は金属が光を反射してしまうことから数値化すると赤の数値が高くなり、正確な計測ができなかった。そのため太陽光と同様の光源下で目視観察を行った。その結果、K24では電気炉で950℃以上の温度で接合したものが基盤と接合部の色彩が一致した。
|