研究課題/領域番号 |
17K02387
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研究機関 | 日本映画大学 |
研究代表者 |
アン ニ 日本映画大学, 映画学部, 特任教授 (70509140)
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研究分担者 |
志賀 賢子 (川崎賢子) 立教大学, 文学部, 特任教授 (40628046)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 映画論 / 日中映画交渉史 / 冷戦期 / 貫戦期 / 越境 |
研究実績の概要 |
本研究は応募時に記述した通り、「冷戦期における日中映画交渉史の空白を埋め、同時に資料調査の新たな対象を開拓することを目的」とし、本年度は「貫戦期における日中映画『狼煙は上海に揚がる』『上海の女』と『白蛇伝』から見る歴史/表象の連鎖と断絶」と題する国際シンポジウムを開催した。 本シンポジウムは、国内外の研究者を招聘し、映画上映、研究報告のほか全体討議を行った。本研究のキーワードとなる貫戦期(transwar regime)を中心に報告内容を組んだ結果、戦時、敗戦と戦後の日中映画交渉を一つの連続する歴史的事象として捉え直してみた。映画史研究分野において、貫戦期の視座によるシンポジウムだったと思われる。 招聘者は、交渉史に関わる重要な映画(俳優を含める)テキストに対する分析を通して、これまで検討することのなかった視点を提示し、我々研究メンバーのみならず、シンポジウムの来場者にも方法論的に学問の刺激を与えたと考えている。 その後、シンポジウムにおける報告は文字化され、早稲田大学20世紀メディア研究所の『Intelligence インテリジェンス』の特集「〈貫戦期〉の日中映画」として刊行された。 代表者のアンニは、昨年8月にポスト満映の所在地である中国の鶴崗で調査を行い、帰国後に調査報告にあたるエッセイを発表。2010年に刊行された自著『戦時日中映画交渉史』(岩波書店)の中国語版翻訳を終え、北京大学出版社に提出した。分担者の川崎賢子は独自の視点による李香蘭(山口淑子)の歴史的分析論考を岩波書店の『図書』で連載しているほか、本研究に関わるいくつかの論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、国内における資料収集を順調に行っているほか、2018年度夏期に、香港電影資料館、北京電影資料館およびシンガポールの国家図書館に赴き、資料調査を行う予定である。 日本占領期の上海で製作されたフィルムの鑑賞を北京で実施するほか、李香蘭が主演を務めた満映製作映画『黄河』の所在を探す作業を続けている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、貫戦期をキーワードに、戦時と戦後における日中映画交渉、交流の諸相に関するフィルムを検証しつつ、所在不明のフィルムを引き続き調査する一方、まだ解明できていない歴史の事例に関して国内外の図書館、档案館で資料調査を行う。また香港電影資料館、中国電影資料館、シンガポール図書館、北京電影学院、北京外国語大学、台北芸術大学など、現地の研究者と連携して研究を継続する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本務校の定めにより、3月上旬で今年度分の収支を終了するため、その後31日までの使用予定分は次年度に執行することになった。
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