研究課題/領域番号 |
17K02388
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
芸術一般
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
伊藤 裕子 中部大学, 国際関係学部, 教授 (50434569)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 嗅覚的表象 / 英国モダニズム / 都市空間表象 / 無感覚の表象 / 第一次世界大戦と嗅覚 / ヴァージニア・ウルフ / ブルームズベリー・グループ / 身体論 |
研究成果の概要 |
本研究では、西欧における香りの文化史の考察に始まり、20世紀初頭イギリスモダニズムのテクストを嗅覚の表象の観点から探り、都市構造の仮想的イメージや人間の身体性のイメージが、テクスト内で嗅覚の表象によっていかに操作されたかを調査した。嗅覚表象は、都市、身体、ジェンダーについての既成概念を覆すために仕組まれ、悪臭表象が意図的に取り込まれたのだ。においという感覚に付随する従来の価値観転覆のため、嗅覚表象が策略的に使用されたことを明らかにした。他方でテクスト中の無感覚に着目し、帝国主義的地理観における非文明性や父権社会下の女性の抑圧された位置づけを帳消しにする、麻痺した感覚の持つ脱構築性を考察した。
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自由記述の分野 |
イギリス文学、表象論
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究の意義は、1910年から30年代イギリスモダニズムが、芳香、悪臭など様々な嗅覚的表象を意図的に取り入れ、嗅覚の感覚に付随する従来の価値観を覆すために戦略的に使用したことを明らかにした点にある。この時代の多様なテクストが、都市空間、新しい芸術、第一次世界大戦などの経験を経て、斬新な感覚や思考をもたらす媒体としての嗅覚的表象を生成した点を評価したことに本研究の重要性がある。 においの多様性、多方でにおいの隠蔽文化とが相まって、においの表象とその意義は進化しつつあり、文化的な再定義を余儀なくされる現代であるが、本研究の社会的意義は、その前段階における嗅覚的表象の構図の一端を論じたことにある。
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