本研究の目的は、我が国の音楽基礎教育としてのソルフェージュを、総合教育としての必要性が問われる広がりの中で、近年とみに関心をよぶようになったフランスの新しいソルフェージュであるフォルマシオン・ミュジカルに的を絞り、その研究の文献資料を調査・収集し、日本向けの教材を新たに作成することにあった。 昨年度に引き続き、イギリス・フランスでの調査により、多くの研究者と出会い、彼らの授業を参観し、文献資料についての貴重な示唆を受け、時間と予算の許す範囲で書籍・資料を購入した。これをもとに、新しいソルフェージュと言われているフォルマシオン・ミュジカルのテキストを2冊執筆中である。またフォルマシオン・ミュジカルの公開講座を、船橋、名古屋、仙台、山形で開催した。さらに、うたの雑誌「ハンナ」に「新しいソルフェージュ、フォルマシオン・ミュジカルとは?」という記事に続き、「ソルフェ力アップ! フォルマシオン・ミュジカル講座」と題して現在までに5回の連載を続けている。加えて、音楽之友社の雑誌「ムジカノーヴァ」に、ピアノ曲のアナリーゼを5回に渡って執筆した。そのうちの1つは、ムック「これで万全! バロックの教え方」に再収録されている。ヤマハミュージックメディアの雑誌「月刊ピアノ」にインタビュー記事として「読書ノススメ 話題作の著者に聞く 『クラシックのからくり~「かたち」で読み解く楽曲の仕組み~』」が掲載された。 これからも、研究紀要、雑誌、一般向けの公開講座などを通して、フォルマシオン・ミュジカルの考え方を広く発信し、著書の形でも公表していく予定である。また、大学の授業では、昨年度に執筆したテキストに基づき、フォルマシオン・ミュジカルの講義・演習を行っていく。今後は、本場パリ音楽院のフォルマシオン・ミュジカルの教授を日本に招聘し、学会や大学の授業等で講演・講義を行うというプロジェクトを計画している。
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