研究課題
2019年度は、研究テーマを日本の伝統演劇における復讐劇(仇討ち物)から、政治劇(戯曲における政治性の反映)に拡大し、さらに対象を18世紀の人形浄瑠璃文楽に絞り込んで、英語による書籍刊行の可能性も念頭に入れて研究を行った。扱う分野を人形浄瑠璃文楽としたのは、舞台での演劇性(シアトリカリティ)が中心となる歌舞伎と比べて、人形浄瑠璃の台本は「読む」ことができ、戯曲(ドラマ)の読解が今なお無視できない方法となっている欧米の研究者との間の「壁」を乗り越える有効な手段と判断したためである。2019年度に扱ったのは『仮名手本忠臣蔵』『近江源氏先陣館』『妹背山婦女庭訓』『伊賀越道中双六』の四作品であり、これらについてそれぞれ約二ヶ月をかけて共同で議論を行うと共に、英語による論文の作成を試みた。その上でロンドン大学SOASの(東洋アフリカ研究院)のA. C.ガーストル教授、A.カミングス准教授、ベネチア大学のB.ルペルティ教授に意見を求め、批判を受けた。英語論文はまだ初期段階のものでそのままでは使えないことがわかったが、今後上記専門家のアドバイスによって改善できそうである。2019年度の国際演劇学会は上海で開催され、欧米の日本演劇研究者との交流は期待できなかったため参加は見送った。それに代わるものとして2020年8月にゲント(ベルギー)で開催予定のヨーロッパ日本演劇学会で研究発表を行う予定だったが、残念ながらCOVID-19のために中止となった。
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Meijo University, Journal of the Faculty of Foreign Studies
巻: 3 ページ: 171-180