研究課題/領域番号 |
17K02393
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研究機関 | 京都造形芸術大学 |
研究代表者 |
齋藤 亜矢 京都造形芸術大学, 文明哲学研究所, 准教授 (10571432)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 表現 / 創造性 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまでにおこなってきた「絵を描くことの認知的な基盤とその発達」についての研究をさらに掘り下げて、「描画のプロセスにおける想像と創造」に焦点をあてた研究である。描画の創造性に光を当てることで、基礎研究から、描画教育のあり方を再考することを目的としている。 2018年度は、想像力と創造性の関係、「見る」と「描く」の関係など、表現と鑑賞に関わる認知のしくみについて、さまざまな分野の芸術家や表現者の言葉も参照しながら考察し、一般向けの雑誌『図書』(岩波書店)に「ルビンのツボ」として論考を連載執筆した(2017年7月号から2018年12月号まで全18回)。「芸術の進化的な起源」についての論考から、人工知能と芸術の関係について考察した論文が人工知能学会誌のAI美学・芸術特集に掲載された。また『心理学ワールド』、『モンキー』、『視る』(京都国立近代美術館)に解説やエッセイを執筆したほか、一般向け、大学生向け、高校生向け、こども向けの講演やワークショップをおこなうなど、研究成果のアウトリーチ活動につとめた。2018年12月には、京都造形芸術大学で、「ヒト以外のヒト科の絵画展:ART AND APES」を開催し、大型類人猿の絵画作品の展示の監修をおこなった。作品だけでなく、大型類人猿に関する研究成果も一緒に学ぶことができるように工夫し、期間中に講演会やワークショップもおこなった。京都大学霊長類研究所の共同利用研究制度を利用して、チンパンジーの描画実験も継続しておこなっている。また、あらたに発足した京都造形芸術大学のデッサン学研究会に参加し、油画、日本画、小説、映画、美術史など、異分野の専門家が集まり、デッサンとはどういう行為か、どういう方法で学ぶべきかなど、教育への応用をふまえて、学際的な議論を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
創造プロセスに関して多角的な視点から考察するために、さまざまなアーティストの創造のプロセスに関する資料、および考古学等の文献資料を集めるほか、美術館や博物館等に調査に行った。これらの資料に基づいて想像と創造の認知的な基盤について考察をおこない、論考にまとめたものを発表している。京都大学霊長類研究所の共同利用研究制度を利用し、「チンパンジーとアーティストの共同制作における創造プロセスの分析」についての実験も継続している。 計画時には予定がなかったが、京都造形芸術大学で、「ヒト以外のヒト科の絵画展:ART AND APES」を企画、展示の監修をした。これまで研究してきたチンパンジーの絵画作品も含む展覧会である。作品とともに研究成果を伝えるための展示方法を検討するなど、アウトリーチ活動も積極的におこなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、さまざまな表現者の創造のプロセスに関する資料や考古学の文献等を集めるほか、美術館や博物館等の調査も継続しておこなう。2018年度に予定していた先史美術の海外調査も実施する。集めた資料に基づいて芸術や創造性の認知的な基盤についての多角的な考察をおこない、ひきつづき論考にまとめていく。 2019年度も京都大学霊長類研究所の共同利用研究が継続採択されたので、チンパンジーとアーティストの共同制作における創造プロセスの分析」についての実験研究を継続する。描線の解析をよりおこないやすくするために、描画時の撮影方法をあらたに試す予定である。またデッサン学研究会と連携し、デッサン時の描画行動について認知科学の視点からの実験および分析をおこなう。それらの実験結果をまとめ、学会および論文等で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していなかったが、研究成果のアウトリーチ活動でもある大型類人猿の絵画展を企画・監修することになった。その準備や関連企画のためにスケジュールを組むのがむずかしくなったので、当該年度に予定していた先史美術等の海外調査や実験を次年度に実施することにした。
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