研究課題/領域番号 |
17K02393
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研究機関 | 京都造形芸術大学 |
研究代表者 |
齋藤 亜矢 京都造形芸術大学, 文明哲学研究所, 准教授 (10571432)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 表現 / 創造性 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまでにおこなってきた「絵を描くことの認知的な基盤とその発達」についての研究を掘り下げて「描画のプロセスにおける想像と創造」に焦点をあてた研究である。描画の創造性に光を当てることで、基礎研究から、描画教育のあり方を再考することを目的としている。 2019年度は描画のプロセスに関して多角的な視点から考察するための資料や、想像力と創造性の関係、「見る」と「描く」の関係など、表現と鑑賞に関わる認知のしくみについてこれまでの研究成果をもとに考察したものをまとめ、一般向けの図書『ルビンのツボー芸術する体と心』(岩波書店)として刊行した。当初予定していたチンパンジーを対象とした対面場面における描画課題の実施が困難な状況となったため、共同研究者とともに、対面によらない新たな課題場面の構築を検討し、その準備をおこなった。また人類の表現の多様性や普遍性、および、その背景にある認知的な要因について明らかにするため、人類学や考古学の領域の研究者らとの共同研究をはじめた。アーティストが描画のプロセスで自覚的にどのように考えながら制作しているのかについて、アーティストや異分野の研究者との研究会をおこない、経験談の収集や議論を重ねた。これまでの研究成果について、一般向けの講演や高校生向けの講演をおこなったほか、保育士やアーティストらと教育としての造形表現のあり方について議論をおこなった。そのほか、雑誌や新聞のインタビュー記事やエッセイの執筆などを通して、アウトリーチ活動にもつとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
チンパンジーを対象とした対面場面における描画課題の実施が困難な状況になったため、対面場面によらない新たな実験場面の構築が必要になり、方法の検討や準備をおこなった。また予定していた先史美術の海外調査については体調不良や他業務での多忙が重なり実施できなかったため、研究期間を延長して研究を行うことにした。
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今後の研究の推進方策 |
描画や作品制作時の認知的なプロセスについての実験やインタビューを進める。表現者の制作のプロセスに関する資料や考古学の文献等を集めるほか、美術館や博物館等の調査も継続しておこなう。covid-19の収束状況次第ではあるが、可能であれば計画していた先史美術の海外調査も実施する。それらを総合して芸術や創造性の認知的な基盤について多角的な視点から考察をおこない、論文等で公表する。研究成果のアウトリーチ活動についても、引続き実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定になかった、研究成果と関連した絵画展を2018年度に実施したことで、実験や調査のスケジュールがずれているが、順次すすめていきたい。チンパンジーを対象とした対面場面における描画課題の実施が困難な状況になったため、対面場面によらない新たな実験場面の構築が必要になり、共同研究者と方法の検討や準備をおこなった。実験がおこなえる状況になり次第、実施する。また計画していた先史美術の海外調査については、体調不良や他業務での多忙が重なり実施できなかったため、今後covid-19の状況が終息して渡航が可能になれば再度計画したい。
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