研究課題/領域番号 |
17K02394
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
堀 潤之 関西大学, 文学部, 教授 (80388412)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 映画史 / 映画批評 / 映画理論 / アンドレ・バザン / ゴダール / ヒッチコック |
研究実績の概要 |
今年度の研究実績は、ヌーヴェル・ヴァーグ誕生前後のおよそ四半世紀(1944-68年)のフランスにおける映画批評の展開を通覧するための最初の作業として着手されたもので、主として以下の2点にまとめられる。 (1)映画批評家アンドレ・バザンの最初期(1940年代前半)の活動、特にバザンの最重要の理論的テクストといえる「写真映像の存在論」に焦点を絞り、2015年に公表されたその草稿の一部(「写真映像の存在論(第一稿)」)の翻訳・注釈・解題、そして同テクストと密接な関連をもつ二篇(「現実主義的な美学のために」「リアリズムについて」)の翻訳および解題を手がけた。その上で、特に上記の草稿の生成研究的な読解を中心に据えた論考「パランプセストとしての「写真映像の存在論」――マルロー、サルトル、バザン以前のバザン」を執筆した(すべて『アンドレ・バザン研究』第2号所収、6-55頁)。これらの作業を通じて、バザンがその活動の最初期にどのような批評的プロジェクトを構想し、それがどのように以降のフランス映画批評史を規定したかを確認した。 (2)1950年代に映画批評家として活躍し、その後、ヌーヴェル・ヴァーグの映画監督となったジャン=リュック・ゴダールに照準を合わせて、1950年代フランス映画批評における「ヒッチコック論争」がどのようにゴダールの後年の作品に谺しているか、という観点も含めた学会発表「ゴダールの読むヒッチコック――『映画史』のヒッチコック読解をめぐって」を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度には、『レクラン・フランセ』や『カイエ・デュ・シネマ』をはじめ、コーパスとなる雑誌等の調査を通じて、フランス映画批評史の論争的なトピックを通覧し、整理する予備作業を行うつもりであったが、その作業は若干遅れている。しかし、平成30年度以降に行う予定だったバザン読解、およびゴダールの批評の読解を先行して実施したため、トータルではおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で挙げた(1)については、今年度明らかにしたバザンの最初期の活動が、映画批評史に照らしてどのような意義を持つかについて更に検討するほか、バザンと他の批評家たち(特にジョルジュ・サドゥールら、先行世代の批評家たち)の論争についても調査するなど、次年度以降も主要な研究対象に据えていくつもりである。 また、それにとどまらず、バザン以降の世代の批評活動についても、読解作業を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、フランス映画批評史に関する一次資料の調査のために平成29年度に計画していた外国出張を、次年度以降に繰り延べたためである。 平成30年度には、当該年度分として請求した助成金と合わせて、主にフランス映画批評史関連文献の購入、海外(フランス)における一次資料の調査を行う予定である。
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