研究課題/領域番号 |
17K02394
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
堀 潤之 関西大学, 文学部, 教授 (80388412)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 映画批評 / アンドレ・バザン / ロラン・バルト |
研究実績の概要 |
今年度は、ヌーヴェル・ヴァーグ誕生前後のおよそ四半世紀(1944-68年)のフランスにおける映画批評の展開のうち、前年度に引き続きアンドレ・バザンに焦点を当てた研究を行うほか、同時期の批評がそれ以降の時代にどのように活かされているのかについても考察した。 バザンに関しては、『アンドレ・バザン研究』第5号の編集とりまとめを行いつつ、バザンが映画に描かれた「収容所」というモチーフに対してどのようにアプローチしているのかを、ヴァンダ・ヤクボフスカ『最後の宿営地』、アルフレッド・ラドク『長い旅路』、アラン・レネ『夜と霧』の3篇の映画評の訳出、およびそれを批評史的に位置づける解題論考「リアリズムの臨界――バザンと収容所映画」によって明らかにした。また、バザンの映画批評を引き継いだ後続の批評家たちの一人と言いうるシャルル・テッソンによる、マノエル・ド・オリヴェイラの映画『繻子の靴』(1985)の作品評を訳出する機会も得た。 その他、フランスの映画批評の流れとも密接な関連のあるロラン・バルトのいくつかの映画論を正面から読み解いた論考(「映画への抵抗と「恋する距離」――ロラン・バルトの映画論をめぐって」)や、現代ポルトガルの映画監督ペドロ・コスタの作品群、とりわけ『ホース・マネー』(2014)における写真表象をバザン/バルトに由来する「画面外」という概念を手がかりに読み解いた論考(「ペドロ・コスタとジェイコブ・リース――「画面外」への誘い」)などを発表した。また、ジャン=マリ・ストローブの新作短篇『ロボットに対抗するフランス』(2020)の日本語字幕も作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は本研究の最終年度の予定だったが、コロナ禍のために今年度も海外出張が出来ず、フランスの図書館所蔵の資料調査、およびそれを元とする1944-68年の期間の映画批評の研究が予定していたほどには進まなかったので、計画を一年延長することにした。 とはいえ、この時期の雑誌に直接あたらないと閲覧できなかったバザン、フランソワ・トリュフォー、ジャック・リヴェット、エリック・ロメールらの批評が、近年次々に単行本として集成されるという巡り合わせも手伝って、バザンをめぐる研究は予定通り進行し、また当初あまり予定していなかったバザンの批評的遺産の評価の作業も手がけたので、全体としてはおおむね順調に進展したものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は本研究の最終年度にあたることから、バザンの映画批評史における位置づけを再確認すべく、一方では同時代のジョルジュ・サドゥール、アメデ・アイフル、アンドレ・ゴズラン等の批評家たちとの論争に注目し、他方ではバザン以降の映画批評、および映画研究の展開を、ジャック・リヴェットの批評や、レーモン・ベルールやスタンリー・カヴェルの一連の仕事を参照しながら検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に予定していたフランス・パリとイタリア・ミラノ周辺への出張を、新型コロナウイルスの蔓延のために見合わせたため。この出張については、2020年度にも実現できなかったので、2021年度に規模を縮小して、繰り延べる予定である。
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