本研究は、地方独立系小規模映画館の顧客価値創造メカニズムについて、日英の比較を通じて経営資源の観点から明らかにすることを目的とし、当該年度の研究を以下の通り実施した。 1)フィールドリサーチ:2019年4月、5月、6月、7月に、大分県大分市のシネマ5にて、新しい試みである浪曲講座への参与観察を実施した。さらに10月に同映画館による浪曲師を招聘しての映画イベントの参与観察を実施した。2019年5月下旬に群馬県高崎市のシネマテークたかさきオーナーへの追加取材を実施した。(2020年3月に予定していた高崎映画祭の参与観察、及びオーナー、各関係者への取材については、コロナウィルス の影響から同映画祭自体が中止。) 2)先行研究:顧客価値に関する理論研究の掘り下げを行った。特に一連の事例研究から浮かび上がってきた主要概念であるロイヤルカスタマー関連が中心。本研究の分析理論の一つであるANT(アクター・ネットワーク・セオリー)の先行研究の分析を行った。 3)研究方法論:2019年5月にM-GTA研究会第86回定例研究会へ参加し、修正グラウンデッドセオリー による分析手法の研究を行った。GTAとM-GTAの共通点と相違点について認識を深めたことで、これまでより確信を持ってGTAによる分析につなげることができるようになった。GTA分析との関連で2019年12月に質的研究分析ツール「NVivo」セミナーに参加した。 4)学会発表:2019年6月に日本文化経済学会での発表を実施した。主に国内の文化経済、映画産業の研究者より有益なインプットを得た。2019年12月に17th Asia Pacific Conferenceにて学会発表を実施した。5)これまでの取材素材の質的分析を部分的に実施。研究全体のキーコンセプト(もしくはキーコンセプトにつながる概念)の発見に至った。
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