研究課題/領域番号 |
17K02403
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
荘中 孝之 京都女子大学, 文学部, 教授 (70390101)
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研究分担者 |
長谷 邦彦 京都外国語大学, 国際言語平和研究所, 客員研究員 (40387981) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 『はだしのゲン』 / 英訳 / ハワイ / 受容 |
研究実績の概要 |
2021年度は、2017年からの国内での調査、そして2018年にハワイで行った調査をまとめて考察し、所属機関の紀要に論文として発表した。 2017年から2019年にかけて複数回、『はだしのゲン』を英訳した市民グループ「ゲン・プロジェクト」の前代表である浅妻氏と、現代表の西多氏にインタビューし、貴重な資料等も借り受けながら、その英訳の困難な部分を考察していった。そこでは擬音語や擬態語の処理や方言の翻訳といった従来から指摘される問題に加えて、基本的に右から左に縦に読む日本語に対し、英語では左から右に横に読むために、場合によって会話の流れを自然なものにするべくコマを反転させたがゆえに、新たな問題が発生していることがわかった。 つまり元の絵に書き込まれていた文字なども反転してしまうので、それらをいったん消して翻訳者によって書き直されたために、不自然な描写になっていたりする場面が見られるのである。現在では日本のマンガを読み慣れている読者も多く、コマを反転させることなく元の絵がそのまま使用されるのが普通であるが、『はだしのゲン』の翻訳では訳語の問題だけでなく訳者の様々な苦労と工夫が見られるのである。 そして2018年にはハワイに渡り、パロロ本願寺の助力を仰ぎながら現地の日系社会および教育機関等での『はだしのゲン』の受容を調査した。具体的にはハワイ大学や現地で有数の教育施設プナホウ・スクール、そして一般書店やコミック専門店、日系新聞などの関係者にインタビューをした。また帰国後にはハワイで以前『はだしのゲン』を広める活動を行っていた人物にインタビューをすることもできた。 これらの調査研究結果をまとめ、中間報告的なものとして1本の論文として発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年春からのコロナウイルスの世界的蔓延により、アメリカ本土、特に『はだしのゲン』の英訳を出版したLast Gasp社のあるサンフランシスコを中心とした現地調査を行うことができなかった。数名の関係者とはメールで連絡を取ることはできたが、現地でも混乱は大きく、当然ながらそれだけでは十分な調査を進めることはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度として、一定の調査研究結果をまとめたい。2022年夏、あるいは2023年春にサンフランシスコを中心に、以前からコンタクトを取っているLast Gasp社の代表や、現地の学校、図書館、書店、メディア関係を取材したい。もし渡航が困難な場合は、Zoomによる関係者との面談やメールでのやり取り等も検討する。渡航前には十分に調整をして、確実に成果を上げられるように準備したい。研究成果は所属機関の紀要に発表する予定である。
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