本研究は「多様な公演分野別」の公演データベースの整備を目的としており、これまでその対象を日本伝統芸能、日本現代演劇と広げてきたが、本科研最終年度に至って、日本におけるオペラやクラシック公演までをその範疇に収めつつある。そして、この過程でヨーロッパのオペラ公演に関する研究会に参加できたことで、従来の(主に国内演劇を中心とした)研究活動の中では見たことのないようなWeb公演データベース(ウィーン国立歌劇場のアーカイブ)に出会えるなど、汎用的公演データベースの「あるべき形」はより具現化しつつある。また、集計作業を通じて、まさに「分野を超えて共通の処理作業」をする必要に迫られる場面があり(実はオペラも歌舞伎並みに「異表記同一公演」が多かったり「1公演複数演目」の分割問題があったりしたのだが、時間制約から場当たり的な対応になってしまった)、データベース構築全体のより効率的な作業工程を考案する必要性を感じている。 このように、研究経過中にも新たな課題に行き当たり、期間中に最終的なデータベースの完成にまでは至れなかったのだが、最終年度の活動として、これまでの研究の重要な一角を占める宝塚歌劇団公演データベースに関して、データ作成から集計までの一連を文章に取りまとめ、日本感性工学会感性商品部会の支援を受けて、共著として書籍刊行することができた。さらに夏にはこの書籍の内容をさらに深化させた学会報告を行った。本来は宝塚歌劇団創設110周年を翌年に控えたこの年、複数の場所でこの研究成果を広めたいと思っていたが、特に年度後半は報告テーマとして取り上げづらい風潮になってしまい断念した。
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