1980年度にポーランド政府から神奈川県立近代美術館に寄贈された約300枚のポスターを中心に、ポーランドと旧ソヴィエト連邦の視覚デザイン等の比較研究を試みた。2017年度には、上記ポスター上のすべての文字情報を収集、解読、翻訳し、9月にポーランドのヴィラヌフ・ポスター美術館で調査を行い、多くのポスターの制作年、印刷所などを特定した。2018年9月までに、所蔵するポーランド・ポスターは32人のデザイナーによる290点であると断定し、ここから、2019年4月から6月まで神奈川県立近代美術館で開催した「日本・ポーランド国交樹立100年記念 ポーランド・ポスター展」に、14人のデザイナーによる176点を出品した。 その展覧会図録兼書籍には論文「ポーランド人民共和国のポスター芸術と神奈川県立近代美術館のポーランド・ポスター」と14人のデザイナーについての解説、176点の詳細なリストを掲載した。また、ユゼフ・ムロシュチャクのご子息にも寄稿してもらった。6月には「ポーランド人民共和国の社会とポスター芸術」と「ポーランドとソヴィエト連邦のポスター比較試論」という連続講演を行い、その内容を反映して9月30日から10月11日まで『日本経済新聞』に記事を連載した。 11月には、ロシアの国立トレチャコフ美術館、ポーランドのヴィラヌフ・ポスター美術館、ウッチ美術館、ポズナン国立美術館にて資料調査を行い、ヴィラヌフの学芸員に上記 14人以外の18人のデザイナーとふたりの写真家の略歴を研究報告書に寄稿してもらうことにした。また、フランチシェク・スタロヴィエイスキのご子息の案内で、ワルシャワ美術アカデミーと、スタロヴィエイスキのアトリエを調査させてもらった。 2020年3月には研究報告書を刊行し、研究ノート「ポーランドの歴史とポスター芸術の展開」と新規寄贈を含む119点の詳細なリストを掲載した。
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