研究課題/領域番号 |
17K02407
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
武井 和人 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (80154962)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歌会資料 / 続歌 / 着到和歌 / 習見聴諺集 / 実暁 / 三条西実隆 / 阪本龍門文庫 / 御五時代和歌 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、以下の2点の歌会資料について、集中的に調査・研究を行い、それぞれ研究成果を公刊することが出来た。 (1)興福寺国宝館蔵『習見聴諺集』第六本〔興7-262〕→5点の歌会資料を含む。平成29年度に研究成果を公表した前田育徳会尊経閣文庫蔵『於先一条殿号妙華寺殿古今御談議之時廿首』〔87・什上〕と共に、16世紀の中心とした南都歌壇の実情を物語る貴重な歌会資料である。考察した歌会資料は以下の通りである。 「天文廿二年二月廿七日於東門院家一続」「天文廿二年二月廿七日当座歌会」「天文廿二年三月十七日為正三位家賢追善一続」「永禄元年三月十七日大乗院家御会」「〔年時未詳(永禄十年以前)〕夢想一続」。従来未翻刻。 (2)宮内庁書陵部図書寮文庫蔵『三条西実隆日課草』〔503・242〕。該本は、三条西家旧蔵、三条西実隆自筆にかかる貴重な資料。本資料は、文明13年(1481)9月1日より同年12月12日まで、後土御門天皇が催した着到千首和歌(所謂『文明千首』)のために、三条西実隆が詠じた歌稿である。添削の跡が歴然と残り、如何にして歌人たちが「定稿」に至るために腐心したかを物語る、レアの資料といえる。従来未翻刻。 なお、上記以外に、阪本龍門文庫蔵『御五時代和歌』〔12冊、9-10/768/12〕の予備的調査を行った。これは、平成29年度において積み残した研究課題である。調査の結果、その歌会資料としての重要性を認めるに至った。 また、「着到和歌」を主たるテーマとする「調査研究報告集会」を2018年8月31日に実施した(於:埼玉大学東京ステーションカレッジ)。上記阪本龍門文庫蔵『御五時代和歌』の報告、及び、2名のゲストスピーカーの発表を含む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文として公刊できた資料の点数は、必ずしも多いとはいえないが、いずれも従来未翻刻であった重要歌会資料であり、大方の研究者の渇を癒すものとなったであろうと思われる。 また、阪本龍門文庫蔵『御五時代和歌』の熟覧を通して、既に一部の研究者が示唆していたところではあるが、該本に歌会資料としての重要な意義が存することが分かったことは、大きな成果といえる。来年度以降、他歌会資料との比較などを通して、更なる考察を加えたい。 さらに、重要な歌会資料である『公宴続歌』(翻刻あり)と、所収内容が重なる『月次和歌御会』(江戸中期写)を、古書肆より購入した。撮影、画像データ化までは完了している。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度も引き続き、歌会資料に即して、調査・研究を続けて行く方針である。 具体的には、まず、国立公文書館(旧内閣文庫)蔵『室町殿月次和歌』〔201・0136〕を調査・公刊することとしている。該書には、試行的調査によると、以下の5点の歌会資料を収めることがわかっている。「長禄二年正月二二日幕府月次始」「長禄二年二月一三日幕府月次歌会」「長禄二年二月一三日幕府当座歌会」「長禄二年五月一三日幕府月次歌会」「長禄二年十一月一三日幕府月次歌会」「康正元年十二月廿九日日野政光十三回忌品経和歌(抄)」。いずれも類本が稀な歌会であり、釈文とともに詳細な考察を加える予定である。 また、昨年度購入した『月次和歌御会』(江戸中期写)を詳細に調査・検討し、資料的な位置づけを論考として公刊する予定である。 あわせて、本研究の最終年度であることもあり、歌会資料全般への見通しを何らかの形で公表したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
一件、消耗品の支出が予算をオーバーしてしまったため。
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