2019年度は、2017・2018年度に引き続き、室町期歌会資料の内、未公刊の資料の釈文・略解題を作成・公開し、室町期歌会研究の基礎資料たらしめるべく、調査・研究を行った。主な研究成果は、以下の通りである。 (1)国立公文書館(旧内閣文庫)蔵『室町殿月次和歌』〔201・0136〕に収められる、長禄2年に催行された「室町殿(幕府)月次歌会」六点の釈文を掲げ、略解題を付した。併せて、肥前島原松平文庫蔵『室町殿月次/長禄二』〔140・13〕との対校結果を示し、より信頼に足る本文を提供した。 (2)2019年に古書肆より購入した、武井蔵『『月次和歌御会』に収められる三種の歌会資料の内、架蔵本以外に全き伝本が知られていない、永正4年に催行された「禁裏月次御会」十二ヶ月分の釈文を掲げ、併せて略解題を付した。当該本は、田中登氏旧蔵本。他に同一の伝本は知られていない孤本である。 なお、論文公刊と併行して、研究集会を開き(2019/8/26、埼玉大学東京ステーションカレッジ)、武井「室町期歌会資料攷二則-架蔵『月次御会和歌』・今治市河野美術館蔵『和歌着到』-」と題する研究発表にて、(2)の礎稿を示し、釈文作成・略解題の作成方針を定めるべく、討議を行った。またこの折の研究集会で、以下の二点の発表もあり、今後の研究方向について、検討をおこなった。・山本啓介「『続千載和歌集』の雑体部について」・石澤一志「「文明度々百首」について」
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