研究課題/領域番号 |
17K02413
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
日高 佳紀 奈良教育大学, 国語教育講座, 教授 (00335465)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日系移民 / カナダ / メディア |
研究実績の概要 |
『大陸日報』掲載記事を精読し、文芸関連記事の抽出とデータベース化の作業を進めている。具体的には、朝日新聞記者であり作家・翻訳家でもあった鈴木悦(1886~1933)が主筆を務めた時代(1918~1924)にスポットを当て、この時代の誌面内容および構成の変化について検討を重ねた。この研究の結果、第一次世界大戦後における日本の国際的位置が、移民地であるカナダにおける日系人コミュニティをとりまく状況に著しい影響を与えていたことが判った。この問題を具体的な新聞記事や文芸関連記事と接続した内容で、論文化すべく研究を重ねているところである。 2017年9月に1週間あまりカナダ現地のバンクーバー市に赴き、国立日系カナダ人博物館およびバンクーバー市立図書館をはじめとする関連施設での資料調査と収集をおこなった。戦前期の日系人コミュニティの生活状況および読書環境を知るための、資料整備等の現状を知ることが主な目的となった。また、バンクーバー市からはなれて、バンクーバー島の旧炭坑街、カンバーランドを訪問、関連施設の視察等をおこない、資料と現状を比較調査した。 上記のとおり、『大陸日報』の精読は進めているものの、全体としては、以前に集めた資料の再検討や新たな資料発掘、さらに、カナダ現地で研究調査をおこなうための環境を把握するなど、本年度は研究を進めていくための整備といった作業を進めた。また、次年度以降の研究を展開するためのテーマの絞り込みについて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、『大陸日報』の精読作業は進めているものの、カナダ現地における研究調査が予想より困難となっている。その理由は、戦前期を知る現地日系人の高齢化と3世・4世といった世代に対するアクセスの困難さという点が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年まで行ってきた『大陸日報』関連記事の精読と分析調査を継続して行う。研究内容を論文化していくためには、記事内容を網羅的に捉えていくだけではなく、具体的なテーマ設定やトピック化をおこなっていく必要がある。さらなるテーマの絞り込みを合わせて行いたい。 カナダ現地での調査を継続して行うが、戦前期を知る現地日系人の高齢化と3世・4世といった世代に対するアクセスの困難さという問題、さらには、日系コミュニティからの資料を新たに発掘できる可能性が低まりつつあることから、今後は、カナダ側の資料に目を向け、カナダの歴史史料にアプローチしていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の論文化がやや遅れているため、必要資料を入手するための経費が余った。次年度の継続して研究調査を進めるために使用する計画である。
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