研究課題/領域番号 |
17K02414
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
磯部 敦 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (00611097)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 奈良県風俗誌 / 書籍文化史 / 出版流通史 / 地方史 |
研究実績の概要 |
今年度は、奈良県内における新聞や雑誌の流通状況を把握するため、奈良県立図書情報館所蔵『奈良県風俗誌』における新聞雑誌流通記事の調査と入力を計画していた。『奈良県風俗誌』は1915(大正4年)の大正天皇即位を記念しておこなわれた県内風俗悉皆調査で、その際に集められた各地域の報告書が『奈良県風俗誌』と呼ばれ、80地域の報告書が現存している。報告書における項目立ては全地域共通のものであるが、今年度は、「第11類 文房具」掲載の「普通ニ所有セラルヽ図書類」「新聞」「雑誌」、および「第13類 記録、帳簿、日記類」より「日記」「帳簿」「記録」、「第16類 慰藉、娯楽」より「遊芸 其種類、流行沿革等」「文芸」を中心に調査し、リストアップすることとした。第11類には当該地域で流通していた紙誌名が列記されており、そこから他地域との比較検討も可能であると考えてのことである。 当初の計画では、リストアップから見えてきたことを学内雑誌における「なら学特集」に報告する予定であったが、これまで入力してきた「奈良県書物環境データ」に組みこんで提示した方が各地域における流通紙誌と地域所在書肆の相関を可視化できると考え、途中から「奈良県書物環境データ」のほうに入力した。『奈良県風俗誌』は現存80地域分のうち約半分の入力を終えているが、これは次年度も継続して入力していく。しかしながらその一方で、「奈良県書物環境データ」は、『奈良県風俗誌』記事が入ったことによって充実したデータとなっている。 また、今年度は奈良県立畝傍高等学校に訪問調査して同校所蔵文書の撮影をおこない、戦後直後における学校図書の廃棄に関する資料を入手した。流通の末端ゆえに生々しい記録が残されており、奈良県書籍文化の検討にあたって貴重な史料となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『奈良県風俗誌』資料の入力は遅れているが、当研究の主目的である『奈良県書籍環境データ』は予定を超えるデータ量となっている。 また、当初予定には入れていなかった畝傍高校訪問は、奈良県書籍文化の解明のみならず、戦後日本における書物の流通や、書物に対する心性を検討するうえで、大きな示唆を与える資料であった。 以上のことから、(2)おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
『奈良県風俗誌』については、次年度も未入力分を継続して入力し、最終年度の「奈良県書籍文化環境データ」において総体的に提示できるようにする。 同時に、予定している「明治期奈良県における新聞流通」解明のため原紙調査をおこない、広告における書籍情報等のピックアップと入力をおこなう。
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