研究課題/領域番号 |
17K02415
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
千本 英史 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (50188489)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 今昔物語集 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、他の費用をも使使用しつつ、北海道の、続縄文文化・擦文文化・オホーツク文化(トビニタイ文化)等についての資料収集を二度にわたって行った。具体的には旭川市立博物館、川村カ子トアイヌ記念館、函館市北方民族資料館、北海道埋蔵文化財センター、札幌市アイヌ文化交流センター等の施設である。かつて私自身、萱野茂氏の『アイヌの昔話』平凡社ライブラリー版(1993)の解説中での、『今昔物語集』とアイヌ民族との関係の把握はきわめて脆弱なものにとどまっていたが、歴史上の早期からの、本土地域と北海道地域との交流が実態的に明らかになりつつあり想定されていたよりもずっと早くから緊密であり、本土側にで生活する者にとっても北海道地域が一定のイメージを持って受け入れられてきた可能性が高くなってきた。今後は、歴史的時代としては『今昔物語集』より後代のこととなるが、松前藩の動きかたなどについて、補強材料として情報収集に努めたい。 九州地区の調査は遅れている。なかなか目処が立たないので、今後沖縄地区まで範囲を広げて考察を進めたい。 東アジア全体との関連関しては、中国の遼文化との関わりについて、説話文学会55周年北京大会(北京の中国人民大学との共催、2018.11.3~5)に参加し、旧知の中国人研究者と交流を深め、新たな知見を得ることができた。 南方熊楠が帰国後、最初に閲覧した田辺市闘鶏神社所蔵の『今昔物語集』(巻2第1~25話、巻14第1~45話)について、分析を進めた結果、未報告の一丁の落丁が発見できた。これについては南方熊楠顕彰館での特別展示「闘鶏神社と南方熊楠」の場において詳細な発表を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二度にわたる現地に赴いての調査研究を行い、北方関係の諸問題については比較的順調に研究を進めることができた。いっぽうで、南部九州の交易関連についてはまだ具体的案進展がえられていない。南方熊楠が見た闘鶏神社本『今昔物語集』についての調査は、あらたな知見を得ることができ、闘鶏神社との連携も順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
北方との関係について、時代は少しずれるが、安藤氏や松前藩の対応について補充調査をしたい。南九州の貿易拠点については目処がまだ立たない段階なので、文献上の史料の調査をすすめると共に、貿易先の中心拠点の一つである沖縄本当での調査を先行したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に業務が立て込み、十全な予算執行ができなかった。 2019年度初頭から、積極的に調査出張なども組み込んでおり、最終的には問題なく予算執行できると考えている。
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