『萬葉集』第四期の歌人大伴家持の和歌、中でも長歌を中心に(1)中国詩文からの摂取についての検討、(2)同時代歌人の作品との比較検討を行った。さらに、(3)『萬葉集』長歌の平安朝以降における受容の検討を行った。(1)については、中国の初学書や書儀・書簡などからの摂取を文献に即して明らかにした。(2)については、大伴坂上郎女との越中期の贈答を細かく検討することによって、共通の教養に基づく中国詩文を利用した表現方法を明らかにした。(3)については、藤原定家における長歌からの本歌取りを検討することによって、これまで見過ごされてきた平安期の『萬葉集』に対する歌学的アプローチと実作との関連を明らかにした。
|