研究課題/領域番号 |
17K02418
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
太田 亨 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (80370021)
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研究分担者 |
朝倉 和 広島商船高等専門学校, 一般教科, 教授 (00390493)
朝倉 尚 広島大学, 総合科学研究科, 名誉教授 (80033231)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 義堂周信 / 空華集 / 典故表現 / 五山文学 / 抄物 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究目的のⅢにあたる訳注作業の準備に終始した。訳注を行うに当たって留意することは、なるべく同時代の言語感覚を用いて解釈するという点である。実際に五山版『空華集』を底本として、作業に取りかかったが、当時の言語感覚が最も表れている抄物の整理に時間がかかった。これまで抄物を中心に研究を進めてきたが、仏典の抄物・韻書の抄物等について理解していなかった点が多く、資料の収集と内容の整理に時間がかかった。また、研究分担者が、『空華集』の五山版と元禄版を比較・校勘も行った。 上記の訳注作業を進める上で、目的のⅡにあたる義堂の語録・日記等の整理も行った。この点については、研究分担者が、『空華日用工夫略集』の整理を行った。写本が多く残存し、それらを閲覧・調査したほか、『空華日用工夫略集』に見られる典故表現を調査した。日記と言うこともあり、詠われた詩以外の事象については、典故表現はほぼ用いられておらず、利用した書名が出てくることが多かった。この日記に出てくる書名の書物から『空華集』の詩句に引用したものが多いと考えられる。今後の訳注作業・典故表現の追究に役立てたい。 目的Ⅰの典故表現の追究については、『空華集』における茶に関する典故表現に着目し、その傾向を調査した。盧仝の「走筆謝孟諫議寄新茶」詩・陸羽の『茶経』を意識した典故表現を頻用しており、表現の目的に応じて、典故の傾向があることが窺えた。その成果は論文として公表した。 今後、各詩における典故を抽出・整理し、その表現の特徴・傾向を探っていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
訳注作業の基礎的作業をほぼ終え、実際に訳注を行う直前であること、典故表現に着目し、その一傾向を明らかにしたことから、おおむね順調であると判断した。今後も継続していくことが大事だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
義堂が用いた詩句・語句に対する言語感覚に近づくため、抄物の整理を行い、語句の解釈を丁寧に行い、詩を読解していく。なるべく早い段階で訳注稿を公表したいと考えている。 一方で、典故表現に着目し、どのような場面で、どの典故表現が頻用されているのか、その特徴の一端を明らかにしていきたいと考えている。
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