研究課題/領域番号 |
17K02419
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
萩野 敦子 琉球大学, 教育学部, 教授 (90343376)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 平敷屋朝敏 / 擬古文物語 / 沖縄の和歌 / 沖縄集二編 |
研究実績の概要 |
当該年度は主として下記3点の成果があった。 (1)2021年5月に翰林書房より刊行予定の狭衣物語研究会論文集『狭衣物語〈変容〉』に単著論文「近世琉球に再生する「みやびを」たち―平敷屋朝敏の擬古文物語をめぐって-」を投稿した。論文の内容は次のとおり。【近世琉球で短命ながら後世に語り継がれる文学的事蹟を残した平敷屋朝敏の擬古文物語四編(『若草物語』『苔の下』『貧家記』『萬歳』)は、『伊勢物語』『土佐日記』『狭衣物語』等からの影響が強い。そこに描かれる男主人公たちはいずれも理想的な若者だが、その若さゆえの脆さや弱さが、相思相愛であるはずの恋愛の行方に壁を立ちはだからせる。しかしそれは決して否定的に描かれているわけではなく、中古散文文学に登場する男たちの脆さや弱さが醸し出す魅力的な「孤独」を引き受けている。朝敏は「孤独」を軸に、中古散文文学の「みやびを」たちを近世琉球の擬古文物語の男主人公たちに再生(変容)だ。】 (2)中古文学会のオンラインシンポジウムで「新たな古文教材の可能性―〈定番外〉の中古・中世王朝物語を中心に―」という題で、新学習指導要領のもとで定番にこだわらない教材で学ぶことが生徒に解釈や表現の資質・能力を育む可能性を拡げるという趣旨の発表を行った。この発表内容は、同学会の機関誌『中古文学』に、論文として掲載された。 (3)近世琉球から近代沖縄に入る頃に宜湾朝保が同時代の歌人の和歌を集めて編纂した『沖縄集二編』の全1439首をすべてエクセルに入力しテキストデータ化した。この和歌集は1990年に他の掌編アンソロジーおよび朝保の歌集とともに『沖縄和歌集』としてひるぎ社から活字になって刊行されているが、歌語索引を備えていない。このテキストデータをもとに、次年度には歌語索引を作成する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年4月より琉球大学の教育学部長に着任した(任期2年)。着任と同時に新型コロナウイルス感染症の対応にも追われ、国立大学法人としては第三期中期目標・中期計画期間の終盤を迎えているため各種の成果検証等もあり、慣れない学部長業務と合わせて、研究に割く時間を確保するのが極めて困難な一年間であった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き学部長の任にあるので、研究時間を確保する困難が予想されるが、前年度入力作業を終えてテキストデータになっている『沖縄集二編』全1439首の歌語索引は作成できる見込みである。また、平敷屋朝敏の擬古文物語のうち「苔の下」「貧家記」の二編の注釈作業を進めていきたいが、こちらも物理的な時間さえあれば、実施そのものには問題はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で出張ができず、全く旅費が使えなかったこと。 学部長業務が多忙で研究が進まず、必要な文献を入手することができなかったこと。 次年度も出張は厳しいが、研究に有益な学術書の購入等に宛てて、本研究に活かしたい。
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