研究課題/領域番号 |
17K02426
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
伊海 孝充 法政大学, 文学部, 教授 (30409354)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 謡本 / 出版 |
研究実績の概要 |
2017年度は車屋謡本刊本の調査・研究を中心に進める予定となっていたため、主要伝本である法政大学鴻山文庫・天理大学附属天理図書館・龍谷大学附属図書館所蔵の伝本の調査と可能な限りの複写を行ない、資料の収集につとめた。収集した資料は、まず車屋謡本写本の主要伝本との比較を行ない、両者の本文の差異を分析し、刊本となった段階でどのような性質面の違いが生まれたのかを考察した。 それらの資料の分析結果の一部は、ヨーロッパ日本研究協会(EAJS)の大会(リスボン大学・8月30日~9月3日)で、「Study on the Text Transformation of NohーHow the Medium of Print Affected the Texts」という題で研究発表を行ない、車屋謡本が刊行される過程で、どのような校訂作業を施されたのか、また「漢字を宛てる」という処置により、多重性のある謡曲本文にどのような制限が生じたのかなどを推測した。 また、2018年度の中心課題となっている光悦謡本研究の一環として、観世愛章句本の資料収集も進めた(伝本が多いので、次年度の作業負担を減らすため)。具体的には、筑波大学附属図書館・諫早市立諫早図書館所蔵の謡本調査と資料を撮影を行なった。このときに撮影した資料は、「玉屋謡本の研究(四)ー玉屋謡本の節付表記をめぐる試論」(『能楽研究』42号)にも用い、光悦謡本に観世身愛の関与があった可能性が低い、という重要な問題提起を行なった。この問題提起は、今年度の本研究に直結するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年度は本務校の校務負担が大きかったため、研究にさける時間が減少してしまった。そのため、車屋謡本の資料収集に若干の漏れがある点と、古活字本と整版本の比較が完了しなかった。ただし、これらの作業のめどはついており、従来の研究計画に追いつくことは可能だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは車屋謡本の研究を完了させ、論文としてまとめることを第一優先事項としている。その上で、計画どおりに光悦謡本の研究をすすめる予定である。課題としては、研究時間の確保が挙げられるが、計画的に調査出張を行ない、考察に必要な資料収集を早い段階から行なうことで、昨年度より研究環境が改善できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に依頼をした資料撮影・現像費用の精算が済んでいないため、残金を残した。また2017年度に撮影依頼ができなかった資料もあるので、その分の費用を残し、2018年度に活用する予定である。
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