国内では国会図書館、地方の郷土資料室等を利用して資料を収集した。国外では米国公文書館、ロックフェラー財団アーカイブ(遠隔地複写サービス等利用)の資料を主として収集した。資料の蓄積と並行し、分析考察を行い、国内外の学会における報告、論文執筆、著書の発表を行い、講演会、評論文などにより社会的な還元をおこなった。プロパガンダ、インテリジェンス、検閲をキーワードとして運営している学際的国際的共同研究会である20世紀メディア研究所(早稲田大学現代政治経済研究所)の運営に携わり、研究発表に加えて月例会における司会の担当、ニュースレター等のウェブ配信、機関誌「Intelligence」の編集を手掛けた。 日中戦争、GHQ占領期及び冷戦期における、プロパガンダとインテリジェンス(情報戦)、文学と映画(アダプテーション)にかかわるキーパーソンないしアイコンである「李香蘭(=山口淑子)」に関する単著「もう一人の彼女:李香蘭/山口淑子/シャーリー・ヤマグチ」(岩波書店、2019)を上梓した。 ロックフェラー財団による日本人創作日の招聘プログラムで米国に留学した有吉佐和子の研究成果を、2019 JSAA(Japan Studies Association of Australia)、於モナシュ大学、2019年7月において報告した。同じく大岡昇平に関する研究成果を「昭和文学会、国学院大学、2019年6 月15日において報告した。 最終年度と研究機関全体を通じて、GHQ占領期から文化冷戦期にかけての日本文学・日本文化の国際化と変容について、その連続と断絶を総合的にとらえるべく力を注いだ。プロパガンダ、インテリジェンス、ソフトパワーの視点を入れて文学における日米関係を分析する試みに着手することができた。ロックフェラー財団の助成についてもジェンダー視点を導入することで、従来にない成果を上げることができた。
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