研究課題/領域番号 |
17K02436
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
石川 一 奈良大学, 文学部, 教授 (80193283)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 拾玉集 / 諸社法楽百首群 / 本地垂迹 / 二諦一如 / 厭離欣求百首 |
研究実績の概要 |
本研究は、新古今歌人慈円の和歌活動を分析・探求するために、その一大特徴である「法楽歌」に焦点を絞り、その背景にある思想基盤を検証するものである。家集『拾玉集』に収録されている諸社法楽百首群という作品には、序・跋文などに彼の宗教観・歴史観が展開されているが、特に天台教学の要諦である「二諦一如」と彼の和歌作品の関係性を解明する。特に最近の天台仏教・伊勢神道・真言密教などの周辺研究者からの言及が相継いでいるので、これまでの基礎的考察の中に「二諦一如」という新しい視点を加味する必要があると思われる。 慈円の諸社法楽百首群を中心に調査・収集作業を前提としているが、平成25年度~28年度科学研究費基盤研究(C)「本地垂迹の視点から見た慈円法楽歌についての基礎的考察」(課題番号:25370221)を考証した結果を踏まえて、本地垂迹に関する思想基盤、寺社縁起と和歌との相関関係などの基礎的領域を新たに補完するものである。 一般的に寺社に所蔵されている貴重文献(内典)は写真頒布が許可されないことが多く、手作業で調査を行うことを余儀なくさせるので、そういう困難な状況に対処すべく、諸機関の博捜が要求される。幸い内務省神社局本『神宮典略』写本の所在も判明し、新たな課題にも積極的に進めることが出来た。昨年末の「研究成果公開促進費」も内定したので、『御裳濯和歌集』に関する資料の解明についての刊行が現実化することになった。今後も総合的視野に立って、「厭離欣求百首」検証など、慈円の思想基盤の解明を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
伊勢内宮に関する和歌を中心とした『御裳濯和歌集』、その他『神宮正権祢宜和歌』『二十一代集抜萃』などについての基礎的論考を中心に展開してきた作業に対して、研究成果公開促進費が内定したことに拠り、周辺基礎資料を顕在化することが可能になり、ますます天台教学の要諦である「二諦一如」に関する解明を進展させることになったことが大きな理由である。 具体的に「厭離欣求百首」に関する慈円歌論を検証するだけでなく、「略秘贈答百首和歌」という作品も彼の思想的著作に深い関係にあることも証明できる見込みである。今後もこれらの成果に基づき、研究解明を推進していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
天台教学に関する「二諦一如」「浅略深秘」などに関する術語を中心に、基礎的資料を探索する。それらを丁寧に調査・分析することによって、本研究の目的に向かって邁進したい。
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