中近世日本における画題享受の諸相を明視するため、具体的な手がかりとして、17世紀の狩野派における「戯画図巻」制作に着目し、国内外に点在する諸本調査を精力的に推進して、10余本の伝本を発見した。そこに描かれた画題を整理・分析した結果、「戯画図巻」における室町物語や江戸初期風俗画、明代出版文化の受容の諸相が浮かび上がってきた。並行して、明版受容を視野に入れた奈良絵本の調査研究を進めた。 これらの分析結果をあわせみる一連の研究から、「戯画図巻」の文学的意義や奈良絵本の制作享受圏との近しさ、中近世日本の画題生成と展開、それを支えた学芸のすがたが浮き彫りとなった。
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