昨年度に引き続き、松本深志神社蔵奉納連歌ならびに松本市文書館蔵河辺家文書の内容的な特徴に関する分析を行った。その結果、同連歌資料は、大坂夏の陣において当主と次期当主とを同時に失った小笠原家が、今後の安泰を祈願するものであった可能性が高いとの結論に至る見通しを得た。本成果は松本市に存する文化財の紹介を兼ね公開授業の形で発表した(於信州大学)。 上記の作業と並行して、伊勢参宮に関する神異譚の時代による変遷・社会的な認識に基づく諸作品中の描写についての調査結果に基づく研究成果を含む『近世前期江戸出版文化史』(文学通信2020・2)を刊行した。 また、昨年度に引き続き、複数の古典籍所蔵機関において研究課題に関連する資料調査を実施した。具体的には、国立国会図書館、国文学研究資料館、九州大学附属図書館、京都大学附属図書館、京都工芸繊維大学附属図書館、佛教大学附属図書館、龍谷大学図書館、八戸市立図書館、仙台市博物館、大阪府立大学学術情報センター図書館、天理大学附属天理図書館、お茶の水女子大学附属図書館、東京大学文学部国語研究室、石川県歴史博物館、オクスフォード大学ボドリアン図書館附属日本研究図書館、大英図書館において、和歌関係資料ならびに近世小説の調査を行った。 今年度は、ブリジット・ルフェーブル氏(リール大学准教授)にゲスト・スピーカーとして招かれる形で、リール大学(フランス)において近世小説および近世出版文化についての講義を行った。
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