研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染状況拡大の影響により、予定していた資料調査(海外における調査を含む)の多くを中止せざるを得なかったものの、深志神社、松本市文書館、国文学研究資料館、国立国会図書館において、課題に関係する古典籍の調査を進めることができた。 また、これまでの調査結果に基づき、深志神社蔵 伝小笠原家奉納連歌について、奉納理由およびその位置づけの考察を進めることができた。 この成果と関連して、同社に奉納された、宮村庄屋河辺家をはじめとする庄屋連中による奉納連歌ならびに奉納俳諧連歌についても調査を進めた。庄屋連中による奉納連歌は、深志神社蔵本のほか松本市文書館に写本が存在し、同本には深志神社に現存しない奉納連歌も書写されている。これらは、書写年次およびその理由等について、併せて分析する必要があると判断し、同館所蔵本の翻刻も同時に進めた。 また同本には、庄屋連中によるものとは別に、17世紀末において松本藩主であった水野忠直による奉納連歌も書写されている。加えて、これとは別に、松本市文書館には、大野氏を通じて河辺家に下賜された忠直による連歌の原本も所蔵されており、これらの書誌調査・翻刻を同時に進めた。 また、松本地域において成立した文芸として上記と関連する、松本の名所および風物を題として作られた句集『松本十景句集』を全文翻刻し、内容的特徴をあわせて解説した。この成果は、「『松本十景句集』翻刻と解題」(共著,『信州大学図書館研究』10号,2021)として公開した。
|