研究課題/領域番号 |
17K02456
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
川上 陽介 富山県立大学, 工学部, 教授 (00574451)
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研究分担者 |
荒尾 禎秀 清泉女子大学, 付置研究所, 客員所員 (20014813)
佐伯 孝弘 清泉女子大学, 文学部, 教授 (40255956)
島田 大助 安田女子大学, 文学部, 教授 (50351177)
山口 満 豊橋創造大学, 経営学部, 教授 (60413762)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 訳解笑林広記 / 絶纓三笑 / 鍾離葫蘆 / 漢文笑話 / 浮世草子 / 増補萬宝全書 / 左振仮名 / 笑話検索システム |
研究実績の概要 |
今年度は、和刻本『訳解笑林広記』第219話~第252話(計34話)の注釈を新たに完成させた。中国笑話集『笑林評』『絶纓三笑』『笑府』『四書笑』、和刻本『笑府』三種、日本人作漢文笑話集『訳準笑話』等、様々な類話を比較検討することにより、東アジアにおける笑話の在り方を継続的に検証している。注釈の成果は、川上陽介「『訳解笑林広記』全注釈(七)」(『富山県立大学紀要』第31巻、2021年3月)に公表した。 浮世草子の笑話性(パロディ的手法)に関する研究は、佐伯孝弘「光源氏と世之介――「幻」巻と西鶴『好色一代男』最終章の比較から――」(『源氏物語を開く』武蔵野書店、2021年3月)により報告された。また、島田大助は、「『西鶴諸国はなし』「狐の四天王」試論―『狐の草子』・越後騒動などとの関係から―」(『鯉城往来』第23号、2021年1月)を公表し、先行研究で指摘されているもの以外に、『西鶴諸国はなし』巻一の七「狐の四天王」には、「狐の草子」・越後騒動・九六騒動が踏まえられていることを明らかにした。さらに、島田は、「江戸時代の文学作品からみる「江戸時代の笑話の特徴」、「日本人の笑いのツボ」について」(2021年2月12日講演)において、安永期の笑話本を取り上げ、中国笑話が日本の笑話に与えた影響の大きさに言及した。 日本語学の研究を担当する荒尾禎秀は、江戸期の整版諸資料における左振仮名の役割と資料による特徴について、広く状況を観察した。その結果、『訳解笑林広記』は左振仮名部分に漢字を交えることが特徴的であり、左振仮名が註釈的な役割を持つことと関係しているのではないかと考察している。 一方、笑話検索システムの構築を目指す山口満は、Webページでの表現方法に関する検討を継続して行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年間30話程度の注釈完成を見込んでいたが、今年度は、計34話の注釈を完成させることができた。その意味では、順調に成果を収めていると言える。 しかしながら、やはり新型コロナウイルスの感染拡大が、書誌学的な実地調査を基本とする研究分野において、致命的な打撃を与えている。 さらには、テキストデータの整理においても、コロナ禍の影響を受け、作業アルバイト学生の確保が困難となり、ほとんど実施できていない状況である。 また、Web表示のためのサーバー調整にも時間を要し、検索機能の検討および実装に注力できていないため、進捗状況としては、やや遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
『訳解笑林広記』の注釈作業については、これまでと同じように、継続的に着実に取り組みたい。日本国内ではまだ本格的に研究が進んでいなかった、中国笑話集『笑林評』『絶纓三笑』、朝鮮刊本『鍾離葫蘆』の研究のみならず、日本人作の漢文笑話集『訳準笑話』『笑堂福聚』等、江戸時代中期以降の笑話集全般にも留意しながら、精度の高い注釈の作成に尽力したい。 なお、新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず、書誌学的な諸本調査が実施できない場合、『増補萬宝全書』は一時的に調査を見合わせ、18世紀半ばにおける日中笑話の比較研究に重点を置くこととしたい。 日本語学研究においては、『訳解笑林広記』の左振仮名について考察を行うとともに、和刻本笑話集における日本語学的課題の取り立てを行う。 情報システム分野においては、『訳解笑林広記』のテキストデータの整理を継続的に行い、Web表示機能を早急に完成・公開するとともに、検索システムの機能・インターフェースの試作と評価を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ整理のために学生アルバイトを雇用する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大により、予算執行が不可能となった。次年度、まとめてデータ整理のためのアルバイト学生を雇用する予定である。
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