研究課題/領域番号 |
17K02458
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
藤原 英城 京都府立大学, 文学部, 教授 (20264749)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 江戸板 / 浮世草子 / 好色本 / 菱川師宣 / 西村市郎右衛門 / 西村源六 / 文運東漸 / 本屋仲間 |
研究実績の概要 |
本年度の研究として、まず第一に文運東漸現象の前史としての江戸版「好色本」の再評価に関して、京都大学文学部潁原文庫および国文研究室蔵の好色本の調査とともに、関連する京都府立京都学・歴彩館蔵本の諸本調査および比較研究を実施した。具体的には、 ①潁原文庫所蔵の透き写し写本『(逸題浮世草子』の原本が歴彩館所蔵の版本『(男色物)』であることを明らかにした。歴彩館本は伊藤松宇の蔵書を保管していた新免安喜子氏の寄贈本であり、俳書のみならず好色本を通じた潁原退蔵・伊藤松宇の交流の具体例として注目される。さらに両書は逸題のため原題が不明であったが、それが個人蔵の江戸版浮世草子『好色三人紅』であることをも考証し、平成30年度京都大学国文学会(12月2日)において研究発表を行った。 ②名古屋市蓬左文庫蔵本『密告の人和気』(上巻)と、これまで紹介されることのなかった京都大学文学部蔵本『蜜漬の人和気』(中巻)を併せて翻刻・解題を行い、「『江戸版浮世草子『蜜漬の一曲(みつ漬の人和気)』(巻上・中)-翻刻と解題ー』と題して、『京都府立大学学術報告 人文』第70号(12月)にて公刊した。当該書は菱川師宣画(推定)の挿絵を有する江戸版浮世草子としては初期の部類に属し、江戸版浮世草子の嚆矢と目される『下谷桂男』(貞享元年三月刊)を意識した浮世草子であることが窺え、貞享・元禄初め頃の江戸地本屋の出版動向を知る上で貴重な好色本であることが明らかとなった。 また第二として、前年に引き続き京都の書肆西村市郎右衛門(二代目)とその江戸出店西村源六の 出版活動について、刊行書の調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
諸本調査の日程が十分に確保できなかったが、研究成果の公表もでき、おおむね順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
潁原文庫蔵本を主とする初期江戸版浮世草子の調査を行うとともに、研究計画に基づき、元文期以降の西村市郎右衛門・源六の出版書の調査・収集を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、書誌調査や資料収集が十分に実施できなかったために次年度使用額が生じたが、次年度にはそれらを含め計画的な予算執行を実行する。
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