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2018 年度 実施状況報告書

近代実録・講談本の研究―事件もの・歴史もの〈説話〉の生成と展開―

研究課題

研究課題/領域番号 17K02459
研究機関大阪市立大学

研究代表者

奥野 久美子  大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (50378494)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード芥川龍之介 / 近代説話
研究実績の概要

本研究の2年目である平成30年度は、〈探偵実話〉を冠した事件もの講談本の収集を継続したほか、研究当初から続けている事件もの講談本『探偵実話:官員小僧』の調査研究を継続し、平成31年度に開催予定の研究会でこれまでの研究内容を発表できるよう、準備をすすめた。
一方で、当初の研究計画では予定していなかったが、本研究課題である〈近代説話〉研究の一環として、芥川龍之介の作品「山鴫」の研究を行い、学会発表ののち論文として研究内容を発表した。これは、研究計画において参加を予定していた、国際芥川龍之介学会が、平成30年度はロシア(サンクトペテルブルク大学)で開催されたため、ロシアを舞台とし、ロシアの代表的な文豪であり日本近代文学にも大きな影響を与えたトルストイ、ツルゲーネフを主人公とした「山鴫」の研究発表をすることが、ロシアの研究者にも関心を持たれるであろうこともあり、有意義であろうと考えたためである。研究の過程で、芥川が二人の文豪をどのように造型していったのか、また、その造型は同時代のトルストイ観、ツルゲーネフ観と比べてどうであるのか、といったことを、具体的に明らかにすることができた。当初予定していた本年度の研究ではなく、学会に合わせて行った研究ではあったが、二人の文豪の〈説話〉が大正期の日本文壇で形成されていく過程を検証することができ、近代文学における〈説話〉の生成と展開という本研究課題に沿う研究になったと考えている。
研究成果は上記学会で発表した後、内容を加筆修正し、「芥川龍之介「山鴫」―原稿・草稿からの考察―」(「国語国文」2019年2月)として発表した。この研究のほか、本年度は、明治(維新)150年という記念年であったことから、それに関連した学会の企画において、芥川龍之介の開化期ものについての研究発表も行ったが、論文化は平成31年度の予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「研究実績の概要」に記載のとおり、本研究課題の二年目は、研究課題である〈近代説話〉に関する1本の論文をまとめることができ、論文や発表といった研究成果はまだであるが、事件もの〈近代説話〉に関する研究の調査もすすめている。また、昨年度にひきつづき、事件もの講談本や実録本を古書店で数多く収集できたことは、現在の研究および今後の研究をすすめる上でも、有意義であった。
さらに、本研究課題の三年目(平成31年度)には、本研究課題の申請時の研究計画に記載したとおり、アメリカから海外研究協力者を招いて本研究課題に関する研究会を行う予定であるが、そのための準備も、本年度のうちに具体的に進めることができた。日程の決定や、その他の参加者、発表者への依頼と決定、会場の依頼と決定などは、本年度のうちに済ませることができた。海外研究協力者の先生や、他に国内からご参加くださる研究者の方々とは、こまめに連絡をとり、研究会での発表準備も相談しながら、それぞれすすめてもらっている。
以上のことから、具体的な研究成果も発表することができ、継続中の研究課題も進捗しており、さらに、次年度の研究会に向けた準備も着実に進めていることから、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

本研究課題の申請時に、研究期間後半の平成31、32年度には、海外共同研究者を招き各年一度ずつ研究会を開くことを予定していた。平成31年度は一回目の研究会開催年となり、上記「現在までの進捗状況」に記載のとおり、これまでにそのための準備はすすめてきており、日程や発表者も決定している。従って、今後、平成31年度は、まずその研究会に自らの研究の照準も定め、二年にわたり継続して研究している事件もの講談本『探偵実話:官員小僧』について、研究会で一定の研究成果を発表することができるように研究をすすめてゆく。さらに研究会での討論や質疑応答もふまえ、論文化をめざす。
なお、この平成31年度の研究会は、本研究課題申請時に研究対象として何度も言及した、事件もの講談本を数多く所蔵する国文学研究資料館の一室を会場としてお借りして開催する予定で、実際に同館所蔵の事件もの講談本を使用した研究内容で、研究発表を行うつもりである。
また、この研究会が一過性のものに終わることなく、確実な研究成果を残して次年度、ひいてはそれ以降の共同研究にも発展させていくことができるように、研究課題代表者としてのフォローも行ってゆく。すなわち、研究発表者が各自、その発表内容を論文にまとめて公にすることができるように、研究会終了後の研究連携、および次の年度の研究会につなげてゆくための打ち合わせなども、こまめに連絡をとりあって続けてゆく。

次年度使用額が生じた理由

本年度は全体としてはほぼ予定どおりに予算を使い切り、4円のみの残りとなった。次年度はアメリカから研究者を招くため、もともとその分の予算を多めにつけていただいており、予定どおりに使うつもりである。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 「芥川龍之介「山鴫」―原稿・草稿からの考察―」2019

    • 著者名/発表者名
      奥野久美子
    • 雑誌名

      国語国文

      巻: 88-2 ページ: 33-54

    • 査読あり
  • [学会発表] 「芥川龍之介の江戸と明治―奠都五十年言説の中で―」2018

    • 著者名/発表者名
      奥野久美子
    • 学会等名
      日本近代文学会関西支部春季大会
  • [学会発表] 「「山鴫」―原稿からの考察―」2018

    • 著者名/発表者名
      奥野久美子
    • 学会等名
      第13回国際芥川龍之介学会
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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