研究課題/領域番号 |
17K02468
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研究機関 | 相模女子大学 |
研究代表者 |
南 明日香 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (20329212)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ジャポニスム / 浮世絵 / 永井荷風 / 小島烏水 / 都市風景 |
研究実績の概要 |
2019年は永井荷風の生誕140年・没後60年の記念年であったので、関連の展覧会や講座が開催された。その中で東京都江戸東京博物館」小講堂で「荷風と明治の都市」の講演を行った。これは荷風の浮世絵受容が日本の風土や都市風景を見直すきっかけとなったことを説明した。また勤務校と相模原市・町田市によるコンソーシアム講座「永井荷風『日和下駄』(1915年)にみる景観―江戸から東京へ」でも、一般向けに講演を行った。さらに名古屋外国語大学の特別講義で、「リベラルアーツとしての「日本美術」多文化環境で働くために」で、浮世絵版画のジャポニスム期の欧米における受容と日本側からの反応の経緯について、説明した。 また執筆依頼原稿としては、文京区立森鴎外記念館での「永井荷風と鴎外」展図録に執筆した。「永井荷風が描いた体感できる街空間」を公益財団法人都市づくりパブリックセンター「都市+デザイン」第38号を執筆した。これらは荷風の浮世絵研究が、図像のみならず江戸時代の文献やフランスでの研究、ひいては自身の風景描写に用いた描写の表現雄w行って、従来貶められた浮世絵版画に新しい価値を吹き込んだものであることを実証したものである。前者ではことにやはり西欧に滞在し都市論を執筆した森鴎外との比較をすることで、同時代的位置づけを市、後者では絵画研究が視覚情報に留まらず、その雰囲気全体を体感する表現になっていること、それが今日の街づくりの発想に役立つことを述べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は2019年3月と4月の研究代表者の入院、および2020年2月からのcovid19関連の社会的状況により大幅に影響を受けた。また西欧における刀装具研究についての調査研究の成果発表(査読付き論文と講演)に時間を要した。ことに小島烏水について資料がそろわず、具体的な成果を上げられなかった。一方で2019年は永井荷風の生誕140年。没後60年の記念年であり、荷風の浮世絵受容とその作品への応用について発表する機会を得た。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの永井荷風の浮世絵受容についての研究成果の発表として2021年1月11日に、日本近代文学館(東京都駒場)で、講演をする予定が入っている。また外部講座で荷風の『江戸藝術論』について講演する予定であったのが、covid19拡散対策の影響で中止になった。もし開催になった場合こちらも併せて研究を進めて、発表の場としたい。さらにジャポニスム学会設立30周年記念シンポジウムが2021年2月20日、21日に上智大学で開催される。二日目の「ジャポニスムの還流」のセクションで、日本近代の浮世絵受容について発表することが決定している。このシンポジウムの発表原稿は、日英2言語での出版が予定されているのでその準備も行う。 目下covid19の影響と大統領選挙で北米の社会状況が不安定であり、シカゴ美術研究所などアメリカの研究機関での調査が困難になることが予想されている。一方で、パリの装飾美術館などがリニューアルオープンをしたので、そうした機関で得られるアメリカの情報も用いながら進めることにする。ことに小島烏水の浮世絵作品描写の表現研究に力を入れる。 万が一海外での調査が不可能である場合、これまでの研究成果をまとめての出版も念頭に置いている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年3月と4月の研究代表者の入院と、covid19対策による社会的状況のために、計画通りの調査・研究活動が滞った。一方で欧米における刀装具の受容については、『ジャポニスム研究』に査読付き論文を発表し、また講演を大阪歴史博物館講堂で行った。これらのために時間を要した。 今年度は国内とアメリカもしくはフランスの研究機関を中心に、研究を遂行して小島烏水についての成果を得る予定である。2021年1月と2月に開催される講演会やシンポジウムの発表にも併せて、調査を整えていく。まだ未発表の、フランス装飾芸術美術館での日本人による浮世絵展覧会についての調査結果の論文も発表する。 社会情勢を鑑みて海外での調査が困難である場合、これまでの発表成果をまとめて出版をすることも念頭に置いている。そのために印刷費が増加する可能性もある。
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